吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

古本道場 --角田光代、岡崎武志

フリーライター、書評家である古本の師匠、岡崎武志さんがテーマを出題し、
それに則り古本初心者?角田光代がアチコチの個性豊かな古本屋さんに出向き
色々な思いをめぐらしながら古本を購入し、古本道を極める過程が綴られる。そんな展開。

 

古本屋さんはほとんど地元で済ませてしまうが、知らない土地で出会うとそそられる。
あの独特の静けさが入店を拒んでいるかのように見えない壁となり、躊躇することも多々ある。
一度入ってしまえばあっという間に馴染んでしまうことも多いのだが、
どうしても呼吸が合わないときがある。呼吸が合わないというのもおかしな表現だが
居心地が定まらなくて、店の主人の呼吸に合わせなれない、という感じだろうか。



古本屋に通うにはなんとなくスキルが必要な気がして、新古書本を品定めしていると
店の主人に「フム、その程度かい」と思われているのではないかと落ち着かなかったりした。
ちょっと「通」のふりをして奥のいかにも高そうな全集とか箱入りの本たちを眺めてみても
「フン、知らんくせに」とか「財布に金ははいっているのかい?」と見透かされているのではないかと
ひとり勝手にドキドキしてみたり。。。

 

しか~し、この本を読むとそれを乗り越えて、どの本屋さんも行って見たいところばかりなのだ。
なんて狭い世界にいたんだろう、と反省しきり。



それにしてもだ、角田光代が古本屋さんを彷徨うさまが、なんとも羨ましい。
水を得た魚、本を得た角田。
語られる角田さんの本に対する思い入れ、愛情、そして知識がさりげなく、愛らしい。

 

そしてそれを捕捉して解説する師匠こと、岡崎さんの抱負な本に関する知識には圧倒される。
岡崎さんの語る本が全て欲しくなるのだ。
あー探したい! その本を手にとってみたい衝動に何度駆られた事か・・・



読んだだけでスキルアップはできないが、奥の深~い世界が横たわっている事がわかった気がする。
その世界に足を踏み込むのはちょっと怖い気もするが、飛び込んでもみたいものだ。



あたりまえですが、古本屋は海外にもある。
文庫版だけに掲載されていると思われる特別編で語られる海外の古本屋に関する
角田さんの文章は面白く、角田さんに親近感を覚えたのでした。