吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

沈黙の春 --レイチェル・カーソン

環境問題の教科書として有名な本書ですが、著者カーソンの本職は海洋生物学者です。
海辺われらをめぐる海などは
とても好きな作品ですが、本書は海から離れ農薬が及ぼす環境破壊に対する問題提起を行っています。
1962年に発表された先駆的な作品です。
日本の作品でも有吉佐和子複合汚染などにも影響を与えました。

 

文章的には他の作品に比べて反復が多く、専門外であるが故なのか正直歯切れの悪さを感じる。
だが、環境問題に対するメッセージは無視できない。
カーソンのメッセージは殺虫剤の散布による生態系への影響、地質への影響、
そしてそれらが連鎖しながら地球全体、勿論人間自身に与える影響への危惧だ。

 

簡単な流れは・・・

 

 農作物についている一種類の害虫を駆除するために殺虫剤をまく

 

 害虫は一旦駆除されるが、他の益虫も駆除される。
 
 虫などを食べる鳥のえさが無くなるとともに、汚染もされ死んでいく

 

 風や雨で、川にも殺虫剤が流れ出ることで魚が汚染され、死滅する。
 さらに周辺に住んでいる人間たちも直接吸引してしまう。

 

 最初の虫は、殺虫剤によって耐性をもって復活する。
 天敵の虫(益虫)がいなくなっているので大量に増殖し再び農作物に大きな影響を与える。

 

 より強力な殺虫剤をまくことで同じ環境破壊が繰り返される・・・・



題名は、殺虫剤公害によって、春になっても虫や鳥は沈黙したまま、
要は生物が死滅した様子を表している。

 

本書で出てくる殺虫剤は農作物に対する大量散布に主眼が置かれているのですが、
個人で利用している殺虫剤だってみんなが使えば同じなんだよなあと思います。
本書を読んで時間はたっているのですが、正直なところその間も家では殺虫剤を利用し続けています。
だから偉そうなことは言えませんが、それでもできるだけ最低限の利用にしようと
心がけるようになりました。

 

今でも殺虫剤に使われる色んな物質に恩恵を受けていることも確かだし、
我々が求めて来た事でもあります。
なのでカーソンの警告を全面的に支持し、殺虫剤を全面的に糾弾することはできない側面もあると思います。
それが本書の感想を伸ばし伸ばしにしてきた理由でもあるわけですが、
やはりカーソンの基本的な警告には賛同できるし、現在問題になっている食の安全に関しても
そのまま当てはまる事なので書くことにしました。
この夏休みに多くの虫や鳥や海辺の生物に触れ、これらが沈黙してしまうのは嫌だなあ
と思ったのがきっかけでもあるのですが。。。



沈黙の春」が「沈黙」にならないよう、考えないといけない事が山積している。