吉祥読本

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潮風の下で --レイチェル・カーソン

古典的ベストセラーともなった、環境問題への警告の書『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソン
『われらをめぐる海』など海を語る著者としても有名である。
本書は、1941年に刊行された彼女の処女作であり、彼女のよってたつ原点ともいうべき作品である。
海辺に生きる生きものたち、海鳥やカニ、そしてさまざまな魚たちが織りなす営みを、
活き活きと美しく描いた、胸躍らせる自然文学の最高傑作。
(「BOOK」データベースより引用)

 

これで全ての作品を読んだ事になるが、この作品がデビュー作だ。
古書店でずっと探していたがめぐり会えず、諦めていたところひょっこり現れた。
最近古書店での出会いは調子がいい。

 

正直なところ、これを最初に読むのが正解だったのだと思う。
他の著書のエッセンスが全て含まれているからだ。
随所に既読感ありまくりである。

 

はっきり言うと、盛り上がりには欠ける。
海の中で繰り返される営みは、ある意味単調すぎて退屈だ。
ボンヤリと海に浮かび、海中メガネごしにじっと海の中を見つめ続けているかのような描写が続く。
まるで24時間、365日浮かび続けいるかのよう。
しかし、その観察力と忍耐力にふと気付くと、いかにその世界が凄い事かが伝わってくる。

 

なぜこんなに淡々とした描写なのに熱意が感じられるのだろう。
1941年に出された著書だが、今でも海の中では長い年月、延々と繰り返されているはずだ。
これからも変わることなく続いて欲しいと願うばかりだ。

 

カーソンの著書は、陸上からボンヤリと眺めていただけではわからない世界に思いを馳せることができるので好きだ。
自然文学の最高傑作か?、と問われれば「われらをめぐる海」や「海辺」の方が好きなのだが、
徹底的に積み重ねた魚たちの描写は、これが一番だと思う。