吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

文明崩壊(上下) /ジャレド・ダイアモンド

いまだに人気があって借りられない「銃、病原菌、鉄」に業を煮やし、本書を先に読んだが
上巻を読んだのが4月。なんだかんだと結局下巻との間に9冊も挟んでしまった。

 

上巻ではイースター島マヤ文明の崩壊が描かれているが、全体を通して著者が力点を置いているのは
森林破壊が人間社会を崩壊させるという警告だと言っても良い。
イースター島といえばモアイ像のイメージしかないが、人口増加、森林伐採による土壌破壊、食糧不足、
部族間戦争という負のスパイラルのあげく、最後は人肉を食するまで追い詰められる。
このように崩壊した経緯は、現代社会に対する警告としてはこの一例だけでも事足りる。

 

日本は江戸時代の環境保護が成功例として述べられ、江戸時代の施策が現代日本
恩恵をもたらしている事に驚く。
環境問題は長期的な展望を持って解決しないといけないことに改めて気付く。

 

衛星写真を繋ぎ合わせた夜の地球の姿は、アル・ゴアの「不都合な真実」でも掲載されていたが、
同じ写真が本書にも掲載されている。はじめて見たときの衝撃は大きかった。
電気の灯りで日本列島が浮かび上がる姿はご存知の方も多いだろう。
資源が少ない日本がこのまま無尽蔵に消費を続けていいものか、不安になる写真だ。
だからと言って江戸時代のような生活に戻る事はできない。
ジレンマだが、逆に深刻に考え過ぎてエキセントリックになっても解決はしない。

 

著者は将来に関して「慎重な楽観主義者」と希望を持った考え方を示している。
どのような問題があるのか知る事、大勢の人が問題意識や解決意思を持つことで
多くの問題は徐々に解決していくとしている。
隣り合うドミニカ共和国とハイチが国境に沿って景色を変えている事実は「政治の姿勢の違い」が
如実に現れた例として覚えておかなくてはならない。

 

日本はこの度の大震災で、大きな意味での環境問題を解決する機会を得たという側面もでてきたと思う。
尊い人命をはじめとする多くの損失を、決してムダにしてはいけない。

 

レイチェル・カーソン「沈黙の春」をはじめとする一連の警告と共に、環境問題に関して考えるには
とてもいい参考書となりました。
ただし、冗長さは否めませんが(苦笑)