イメージとして川端康成と大宅壮一を結び付けたことは無い。むしろ全く真逆な印象しかない。
川端作品はずっと昔に読んだきりだし、大宅に関しては一冊読んだきりである。
ただし、大宅壮一ノンフィクション賞に関しては興味がある。
と書きつつ講談社ノンフィクション賞と共に大賞作品をあまり読んでいないことに気付きました。
評価の高いノンフィクション作品は改めて力を入れて読んでいこうと思います。
脱線したので戻します。
川端と大宅、特に川端を中心にした出版界の黎明期を描いているがこれに菊池寛を絡め、
当時の出版に関する情熱物語、みたいな作品。
菊池寛に関しては後に猪瀬さんが「心の王国」で改めてスポットを当てるくらい興味深い人物なのだが、
確かに多くの作家や出版社に影響を与えていた事が改めてわかる。
川端のキャラクターに関しては特に知識が無かったが、思っていたよりも変わり者の印象を持った。
好きな女性への奥手なわりに執拗なまでのアプローチ、それも友人知人を使っての執拗さは
今の時代であれば微妙にストーカー扱いになりそうだし、臆面も無く菊地に金の無心を繰り返す様は
なんと厚顔な、と思う。まあ、この時期の作家は金の無心はあたりまえだし相当アクが強いようだ。
大宅に関しても知名度のわりにどんな功績がある人なのか案外知らない。
本書では大宅が頭角を現すあたりを主に描いているため、全体像を知るには別の本を読まないと
わからないだろう。
だが、大宅のもつバイタリティは充分に伝わってきた。
個人的には勝手ながら批評家としての強面(顔は知らないが 笑)な印象があったが、
奔放な妻に翻弄されている姿はちょっと意外でもあり(笑)
他に印象的だったのは、芥川龍之介の「将来に対するぼんやりした不安」と書き遺し
旅立った原因に関してひとつの見解が示されており、むしろ原因は明確ではないか!と思わされる。
猪瀬さんらしい事実の積み重ねによる分析は、説得力がある。
川端の女性がらみの話は長かったが(笑)後半の出版界の熱気や時代が変化していく様は、
まま業界の広がりや勢いを現すかのようなスピード感を伴っていて瞬く間に読みきってしまった。
大宅に関してはもう少し知りたいので、関連する作品を探して読みたいと思います。