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海賊モア船長の遍歴 ::多島斗志之

シリーズ第二弾の「海賊モア船長の憂鬱」に続いてさっそく読みました。
文庫本で2段組だった事に驚きましたが非常に読みやすくグイグイとストーリーに引き込まれ、こちらのほうが格段に面白かったです。

 

モアが率いる
粗野で、
下品で
鈍感で、
身勝手で、
狡猾で、
無節操で、
無教養な、
困り果てた男ども
の集団である海賊団の面々との出会いや別れ、モアがなぜ海賊になったか、長官ピットとモアの出会いなどエピソード満載に大満足。2作目でのモア船長たちの出番がかなり少なかったことがよくわかりました。

 

2作目を先に読んでしまった事がかえって功を奏したのでしょう、
2作目で謎になっていたことが(勝手に謎にしていたんですけど 苦笑)
1作目で解き明かされた形になり、順番に読んだ時とはきっと違う愉しみ方ができたに違いありません(笑)

 

海賊討伐のために出発したキッド船長率いる「アドヴェンチャー・ギャレー」に
知り合いの船乗りに誘われ共に乗り込んだモアは、船乗りとしてメキメキと頭角を表しますがいっこうに海賊討伐がすすまず、とうとうキッド船長は海賊になることを決めます。
共に海賊となって過ごしていたモアは意見の合わない船長と袂を分かち、「アドヴェンチャー・ギャレー」を貰い受け自ら船長となり海賊として生きる道を選びます。

 

拷問で殺された兄であるアーサー・モアや妻の謎の死の真相、薔薇十字軍と東インド会社の関係の謎、義兄が船長をしているセプター号との戦い、ムガール皇帝との駆け引き、マドラス長官トマス・ピットとの出会い、兄を殺した海賊ブラッドレー船長の指揮するタイタンとの戦い。
などなど、次から次へとテンポ良く繰り広げられる航海はかなり楽しめました。

 

ピット長官の人を食った態度と腹では何を考えているのかわからないキャラは若い頃から備わっていたようです。
気になっていたピットとモア船長との間にあった謎も解けました。
(だ・か・ら~、順番に読んでいれば謎ではないって 笑)

 

ピット長官の図書館利用を許されるモア船長がその蔵書の中で特に気にしていたのが
モンテーニュの「随想録」。
モアの生き方、考え方を示唆するものとして「随想録」からの引用がいくつか見られたが、何よりも作者が影響を受けているように感じられました。

 

「人間よ。汝らは空虚でみすぼらしい存在なのだ。道化芝居のおどけ役なのだ」



多くの人が思い浮かべるであろう荒くれな海賊たちではなく、妙に落ち着いていて親しみが涌きます。
ルフィーのように猪突猛進ではないし、ジャック・スパロウのようにお調子者でもない。
クレバーな海賊としてとても魅力的な船長像はもう少し読みたいので第三弾を望みたいのですが。。。。