吉祥読本

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センセイの鞄 ::川上弘美

ひとり通いの居酒屋で37歳のツキコさんがたまさか隣あったご老体は、学生時代の国語の恩師だった。
カウンターでぽつりぽつりと交わす世間話から始まったセンセイとの日々は、露店めぐりやお花見、
ときにささいな喧嘩もはさみながら、ゆたかに四季をめぐる。年齢のはなれた男女の、飄々として、やがて切々と慈しみあう恋情を描き、あらゆる世代をとりこにした谷崎賞受賞の名作。(新潮社サイトより引用)



普段より書いているが恋愛小説が苦手である。べたべたアマアマした作品を読んでいるとついイライラしてしまう。
この作品は歳の離れた男女の恋愛小説です。宗旨替えしたわけではありません。
川上弘美作品は読んだことがなく、しかし雰囲気として嫌いな要素を感じさせない。根拠はありませんが(笑)
実際読んでみたら時間の流れがまったりとしていてなんとなく恋愛小説?
という程度の感覚だったので思ったとおりだったといえるでしょう。

 

高校で国語を教えていた年老いた男と、かつての教え子のツキコの交流を、居酒屋を主な舞台として描いている。
飄々として何を考えているかわからないセンセイと、一歩踏み出すことが怖くて、結果、何事もなく過ごしてきてしまったツキコさんの咬みあっているのかいないのかの会話が妙な可笑しみを感じさせる。

 

怒ってみたり、無視してみたり、何ヶ月も会わなかったり心配してみたり、誰もが(若い頃に)経験するあたりまえのことを大人版にするとこうなるのかな、と思える日常を淡々と描いている。
ただそれだけだが、ラストはさっぱりしつつも切ない。
こんな恋愛小説であれば、たまにはいいかもしれないと思うのは歳をとった証拠か(苦笑)