吉祥読本

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炎の眠り ::ジョナサン・キャロル

ぼくは呆然としていた。目の前に、三十数年前に死んだ男の墓がある。そこに彫られた男の肖像が、ぼくだったのだ。そのとき、見知らぬ老婆が声をかけてきた。
「ここにたどりつくまで、すいぶん長いことかかったね!」捨て児だったぼくは、
自分がなにものなのか知らない。
悪夢が始まった・・・・永劫の闇を覗きこむがごとき旋律の結末。
『月の骨』に続く驚愕のダーク・ファンタジィ!(裏表紙より引用)



「月の骨」に出てくる脇役の監督が引き続き出てきますがストーリー自体は独立したものです。
全体的にロマンスな感じが漂いますが(笑)キャロルの特徴なのでしょうか。
「月の骨」も面白かったけれど、登場人物たちの会話やストーリーの盛り上げ方、
それに結末のキメ方を考えるとこの作品のほうが好みかもしれない。
日常を長めに書き込む事にかけては今まで読んだ作品と同じだが、そのなかに徐々に入り込んでくる得体の知れない「何か」をさりげなく描きこんでいくところはうまい。

 

シャーマンが出てきたりするのでオカルトになっていくのかと思いきや、、、
やはりダーク・ファンタジィと呼ぶしかない作品。
今まで読んだキャロル作品中では雰囲気は明るめ。
主人公のウォーカー・イースタリング、マリス・ヨークをはじめ、ちょっと出来すぎなキャラ造詣だと思うが、住んでいる世界が別世界で羨ましかったりするのも小説ならでは。
「死者の書」を読んだ時にも思ったがつくづく小説の持つ醍醐味を感じさせてくれる作家さんなんだなあって思う。