吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

死者の書 --ジョナサン・キャロル

2冊続けて消化不良気味だったので、がっつり目先を変えようと混沌とした我が書棚から未読作品を探すことに。ライバルたちを蹴落として引っ張り出したこの本。ああ!早く読んどけば良かった!
大いに反省。きっとまだまだ良書が埋まっているに違いない!!



ぼくの目の前で、少年がトラックにはねられた。事故のあと、町の人間が訊いてきた。
「あの男の子、はねられる前は笑ってました?」笑って?・・・・ここはアメリカの小さな町。
1人の天才作家が終生愛した町だ。ぼくは彼の伝記を書くために逗留している。
だが知らなかった、この世には行ってはならない町があることを。
鬼才作家の名を一躍高からしめた、衝撃のダーク・ファンタジィ!
(裏表紙より引用)



そもそもこの作品を買ったキッカケは書店で見たこの裏表紙の文言だった。
この文言を読んで興味が涌いた人は読んでおいて損は無いと思う。

 

高校教師のトーマスは亡くなっている天才作家、マーシャル・フランスの伝記を書こうとする。
同じくマーシャル・フランスの熱狂的ファンであるサクソニーと出会い、
二人はマーシャル・フランスがかつて住んでいたゲイレンに向かう。
しかし、そこで生活をはじめた二人は、住人たちの行動に違和感を感じはじめる。。。。

 

本が好きな人には、それぞれ本に対する色んなタイプの愛情があると思います。
何らかのかたちで本が好きならば、トーマスたちを通してこの作品の中に漂う「本に対する愛情」を
感じ取ることができるのではないでしょうか。
前半の印象としてはそんなことを考えてしまえるくらいゆっくりと展開します。
何気ない言葉や行動は非常に計算されているくせに、さりげない。
読みすすめていくだけで自然にトーマスが感じる違和感を共有することができました。

 

しかしラストに差し掛かるとこの世界の構成をふと予感できてしまった。
もっと昔に読んでいれば完全に気付かなかったかもしれません。
ただ、確かにその予感の方向性はあっていたのですが、にもかかわらずラストの展開は期待以上に、
予想以上に素晴らしいものでした。
前半の時間をゆったりと描いたことは作者の計算だったのだと思われます。
小説を読む醍醐味ってこれなんだよなあ、とほくそ笑んだりため息をついたり。

 

とても忙しいさなか、この世界に没頭でき、現実世界との切り替えがスムーズにできたことには感謝したい。
読めてよかった!



キャロルの作品はあと2冊持っているので年内に手をつけたいが、意外と時間がないかも・・・