吉祥読本

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サイゴン・ピックアップ ::藤沢周

初読みの作家さんです。ちなみに藤沢周平さんとは無関係です。

 

借金取りに追われ、鎌倉の禅寺に修行僧として潜り込んだ男、「イナガワキョウスケ」の話。
坊さんになった動機が不純なんで馴染んできた俗世間からそう簡単に逃れることはできない。
というか俗世間から身を隠すだけで中身はほとんど変わらない(笑)

 

ところがその寺にいる僧侶たちはイナガワに負けず劣らずの曲者ぞろいでちっとも僧侶らしくない。
夜な夜な抜け出しては桃色の世界に身を任せたり(笑)、自殺を図ったり、放火事件を起こしたり権力闘争があったり、借金取りの強面が乗り込んで来たり、俗世間とちっとも変わらない。
こんな寺やナマクラ坊主たちをどこかユーモアを感じさせつつハードボイルドタッチに描いている。

 

街中で見かける托鉢僧、結構バイト感覚でやってる人がいると聴いたことがあります。
確かにお経を唱えずに独り言をぶつぶつとつぶやいてるだけの人も見かけたことがあるし、結構目つきの怪しい人もチラリホラリ。
この作品に出てくる僧侶たちは案外リアルなのかも?
普通のお坊さんはほとんどの方が真面目なんでしょうけどね(一応フォローしときます)
ただ、かつて修行僧とよく飲み歩いたことがあるけど、確かに色々と思い当たるフシがあります(笑)
ここでは控えますが。。。

 

表題作は「サイゴン・ピックアップ」、他の章の題名が「白ナイル」、「ベナレス・クロス」となっている。
題名からしてもハードボイルドを感じるが、実際なぜこの題名になっているのかは不明。
内容と題名に恐ろしくギャップを感じる。何かの暗喩なのかもしれないが全く読み取れませんでした。
深く考えなくていいのか、修行が足りないのか(笑)
とにかく坊さんが主役の題名とは思えませんでした。

 

面白いんだか面白くないんだか自分でも判断できなかったが、なんとな~く嫌いじゃない匂いがするので、もう数冊読んでみたい作家さんです。