吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

【は行】の作家

ワン・モア・ヌーク

著者:藤井太洋出版社:新潮社 近未来のリアルを描くことが多い作家さんだが、これは2020/3/6~3/11という期間の話しなので、もう目前である。3.11を題材とする本書は東京に持ち込まれた原子爆弾を利用して政府にある要求を求める人物、その人物と同床異夢の…

他人事

著者:平山夢明 出版社:集英社 この夏、「ナツイチ」の一冊として平積みされてたのを見かけ、読んでないのに気づき購入。映画「ダイナー」と合わせて一気に売ろうと思ったのでしょう、気持ちはわからないではないが「ナツイチ」の一冊に加えてもよかったん…

あむんぜん

著者:平山夢明出版社:集英社 「デブを捨てに」「ヤギより上、猿より下」に比べるとインパクトに欠けた気がするが、(慣れてしまった自分がいるのか?といささか心配になる)普通に考えると相変わらずのグロさ加減に平山先生の脳をつつきたくなる。だがしか…

ハロー・ワールド

著者:藤井太洋出版社:講談社 自称何でも屋のエンジニア文椎(ふづい)をメインに描かれるほぼ現在と少し先を描くテクノロジー連作短編小説。人との繋がりを重視して信頼できる仲間たちと共にやや熱い正義感で動く文椎が格好よく羨ましい(笑)Amazonのドロ…

サイゴン・ピックアップ ::藤沢周

初読みの作家さんです。ちなみに藤沢周平さんとは無関係です。 借金取りに追われ、鎌倉の禅寺に修行僧として潜り込んだ男、「イナガワキョウスケ」の話。坊さんになった動機が不純なんで馴染んできた俗世間からそう簡単に逃れることはできない。というか俗世…

4444 ::古川日出男

この題名を見た瞬間、これは読まねば、そう思いました。別に古川ファンだからとか、古川作品としては読みやすそうだなとか、成海璃子が絶賛したから(笑)とか、そんな理由ではありません。この題名で三津田さんが作品を書いたらどんな表紙であっても買うこ…

それからの海舟 ::半藤一利

幕末の動乱期の中、幕臣の中心として江戸城無血開城という大仕事を成し遂げた後の人生を勝海舟はどう生きたのか。新旧相撃つ中で旧幕臣たちの生計をたてる道を探り、福沢諭吉らの批判を受けながらも明治政府の内部に入り、旧幕府勢力の代弁者としての発言力…

天才の栄光と挫折-数学者列伝 ::藤原正彦

自らも数学者である著者が、天才数学者―ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ―九人の足跡を現地まで辿って見つけたものは何だったのか。この世にいて天国と地獄を行き来した彼らの悲喜交…

13 --古川日出男

古川日出男のデビュー作をようやく読みました。うん、長い!ちょっと長くて疲れました。アラビアの夜の種族も長かったけど、比べると圧倒的にこちらのほうが読みにくい(苦笑) 片方の目だけが色弱で、普通の人とは違う世界を見ることができる主人公の橋本響…

未踏の時代 (日本SFを築いた男の回想録) --福島正実

1959年12月、『S‐Fマガジン』が創刊された。初代編集長は福島正実。それまで商業的に成功したことのなかったSFを日本に根づかせるため、彼の八面六臂の活躍がはじまる。アシモフ、クラーク、ハインラインに代表される海外のSF作家を紹介するとともに、小松左…

DINER --平山夢明

わたしはある日、殺し屋専門の定食屋(ダイナー)に抛り込まれた。ほんの出来心で、奇妙なバイトを引き受けたばっかりに・・・・・。本当に最悪な出来事っていうのは、なんお助走も前触れもなく起こる。足元に空いた真っ黒い穴に、人は落ちるまで気づかない…

星新一時代小説集 天の巻 --星新一

星新一×松本大洋 最強のコラボレーション! 「ショートショートの神様」が遺した傑作時代小説の数々を収録 と言っても絵の掲載数は少ない。まあいいか。大好きな二人のコラボですから当然見つけるなり購入しました。 「殿さまの日」「江戸から来た男」「道中…

僕たちは歩かない --古川日出男

心地の良いテンポで語られる世界は、2時間多い26時間の世界。 一日がもう少し長いといいなと思ったことは結構いるのではないかと思いますが、 そんな世界に迷い込んだ「僕たち」の切なさと成長が描かれたファンタジーと呼んでもいい作品です。 日本で鬱屈と…

マイナス・ゼロ --広瀬正

「BOOK」データベースより引用1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械―それは「先生」が密…

ルート350 --古川日出男

比喩表現を使わせてもらえば世界を箱庭に閉じ込めてしまったり、細胞を宇宙にしてしまったり、縦横無尽にスケールを変化させながら発する言葉とビートが機関銃のように乱射されるのは気持ちが良い反面、「的」をはずしやすい気持ち悪さをも伴う。短編集なの…

鯨の王 --藤崎慎吾

文藝春秋Webサイトより引用小笠原諸島の深海で巨大鯨の骨が発見された途端、盗まれる。未知の鯨の可能性を指摘していたアル中の鯨類学者に、米バイオ企業から調査の依頼がくる。同じ頃マリアナ海域で米海軍攻撃型原潜(SSN)が襲われ、乗組員半数が変死を…

猫の客 --平出隆

「BOOK」データベースより引用はじめ“稲妻小路”の光の中に姿を現したその猫は、隣家の飼猫となった後、庭を通ってわが家を訪れるようになる。いとおしく愛くるしい小さな訪問客との交情。しかし別れは突然、理不尽な形で訪れる。崩壊しつつある世界の片隅で…

黒冷水 --羽田圭介

「BOOK」データベースより引用兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委…

サウンドトラック(上下) --古川日出男

「BOOK」データベースより引用東京は異常な街に変貌していた。ヒートアイランド現象によって熱帯と化し、スコールが降りそそぐ。外国人が急増し、彼らに対する排斥運動も激化していた。そんな街に戻ってきた青年トウタと中学生ヒツジコ。ふたりは幼いころ海…

アラビアの夜の種族(上中下) --古川日出男

文庫版になって間もなく購入したのですが、今まで手を出せずにいました。躊躇の連続でした。しかし、今年じっくり読む必読作品として浮かんでいた筆頭でもありました。やはり古川作品の3巻分の文章というのは考えるだけで覚悟がいります。そしてついに、じっ…

独白するユニバーサル横メルカトル --平山夢明

「BOOK」データベースより引用タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の…

あの戦争は何だったのか --保阪正康

本書は一昨年に購入してずっと本棚で眠らせていたのですが、本作品を基にしたテレビ番組が放送されることを知り、先日急遽読みました。まさかこの本で番組が制作されるとは思っていなかったので慌てましたが、新書とはいえあっと言う間に読めました。 この手…

ぬしさまへ --畠中恵

「BOOK」データベースより引用きょうも元気に(?)寝込んでいる、若だんな一太郎の周囲には妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼なじみの栄吉の饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が聞こえたり…。でも、こんなときこそ冴…

ボディ・アンド・ソウル --古川日出男

本書より引用二〇〇二年十一月から二〇〇三年七月、東京――作家フルカワヒデオの魂は彷徨っていた。肉体は死んでいる。しかし夢見ている。失われた妻を求め、導師に導かれながら、この”低音世界”で物語は語り続けられる。なぜ物語るのか?なぜ物語られるのか…

しゃばけ --畠中恵

今頃になってようやく読みました。しゃばけシリーズ突入です。畠中恵(「はたけなか めぐみ」)をずっとハタナカと読んでいました(笑) 「BOOK」データベースより引用 江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが…

ほしのはじまり―決定版星新一ショートショート --星新一(著), 新井素子(編)

半年がかりで読み終えました(笑)色んな本を主食として読みながら、おやつのように間食しながら読んだもので。。。。でも贅沢なおやつでしたよ。主食よりも面白かったりして(笑) 星新一の本(ボッコちゃん、午後の恐竜)は結構読んでいますが、ほとんど読…

午後の恐竜 --星新一

表題を含む11作品が収められています。表紙はヒサクニヒコ氏。実はこの作品の感想文を書くのはこれで2度目になります。一回目は中学生のときの夏休みの宿題。星新一の1ページにも満たない作品をピックアップして、それよりも長い感想文を書いてやるんだ、と…

東京漂流 --藤原新也

写真雑誌の草分け的存在の「FOCUS」に連載されていたものがまとめられた本書は、読んだ当時とても衝撃的な内容だった。衝撃的過ぎて「FOCUS」の連載が中止になったのですが、実に多くのメッセージが含まれている。「FOCUS」に連載されていたので、写真と文章…

生物と無生物のあいだ --福岡伸一

あまり新書には手を出さないのですが、題名で買ってしまいました。レーチェル・カーソンの「海辺」のような、素人にもわかり易いプロの文章が読めるのではないか、との思いがあった。完全に文系の頭しか持っていないので、わかり易い理系のはなしには興味があ…

ハル、ハル、ハル --古川日出男

古川日出男が朗読会をやってるのをテレビで見たことがある。凄い勢いで大声で叫ぶように読んでいた。それを真似て、機関銃のような勢いで読んでみた。心の中で、叫ぶように。ちょうど1時間くらい時間があったので図書館に行ったら本作が目に入った。1時間で…