吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

午後の恐竜 --星新一

表題を含む11作品が収められています。表紙はヒサクニヒコ氏。

実はこの作品の感想文を書くのはこれで2度目になります。
一回目は中学生のときの夏休みの宿題。
星新一の1ページにも満たない作品をピックアップして、それよりも長い感想文を書いてやるんだ、
というちょっとしたいたずら心で作品を選んでみたが、
感想を書くには、その作品を丸写ししている状態になることに気付き、断念した。
短いから結局全文引用状態にしかならない。
すっかり小賢しい大人になった今でなら何とか書けるかもしれないが。。。。
結局もう少し長い「午後の恐竜」を選んだ。

星新一の作品の中でベスト10をあげるとしたらこれははずせないと思っています。
先日アップした[http://blogs.yahoo.co.jp/terashoukichi/16020745.html 日本SF全集・総解説]でも
全集(架空ですが)入りしている。

中学生のときには、読んでいる間、いったい何が起きてるんだろう・・・とドキドキしながら読んだ。
突然現れた恐竜たちの幻影と、潜水艦がどうつながっていくのか見当がつかなかった。
読み終わったときに「スゲー」と思って興奮した。

良く出来ている。中学生ながらそう思った。
このアイデアは浮かびそうで浮かばないよなあ。。。
星新一作品のなかでも完璧なオチのひとつと断言できる。
こんな短い作品でこんなに深い作品に仕上げるなんて神業としかいいようがない。

今まで何度か読み返してみたが、本作の凄さはいつ読んでも、
そして今読んでも、オチを知っていても全く古さを感じさせない点にある。
若い頃よりも終わりの切なさをより実感できるくらいか。

淡々と、クールに、そして時代背景を徹底的に排除した絞りに絞った文章は
これから先も、当分評価されることになるでしょう。
世界はいまだに何の問題も解決できていないのだから、なおさらだ。


中学生のときの感想文は、もう残っていない。
どんな文章を書いたか見てみたいが、多分、今とほとんど変わっていないと思う。
それは私が30年以上成長しなかったのではなくて(汗汗)、作品の持つ力によるものです!!


今は、街中に恐竜がフラリと現れないことを、祈るばかりである。