吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2016年4月の読書リスト

粛々と、できることをやります。



 2016/4/6読了
 /紙の動物園
 ケン・リュウ
 今年のTwitter文学賞海外部門で1位となった作品なので読んでみた。
 SFというかファンタジックな作品が多いが、特筆すべきは中国系の著者だけ
 あって東洋文化が 色濃く反映されていることだろう。
 「紙の動物園」は、えもいわれぬ感情を呼び起こされ、感動的。
 日本人が主人公の「もののあはれ」や日本・中国・台湾の歴史を背景とした
 重苦しい「文字占い師」、そしていきなりスチームパンクかよっ!と叫びたくなる
 「良い狩りを」が印象に残った。
 評判通りハイレベルな作品群だった。



 2016/4/15読了
 ::あしたは戦争: 巨匠たちの想像力[戦時体制]
 小松左京/山野浩一/筒井康隆/手塚治虫/海野十三/江戸川乱歩/今日泊亜蘭/ 辻真先/荒巻義雄/星新一

 

 戦争という切り口で集められた作品集。星新一筒井康隆など既読作品の面白さを
 再認識できた。
 内容的には江戸川乱歩の「芋虫」が嫌な気持ちにさせられ印象に残った。
 海野十三の冒険活劇的な作品はある意味新鮮だったが長すぎてちょっと
 飽きてしまったかな。
 このシリーズのあと2作品も入手済みなのでじっくり読みます。
小松左京:「召集令状
山野浩一:「戦場からの電話」
筒井康隆:「東海道戦争」
手塚治虫:「悪魔の開幕」
海野十三:「地球要塞」
江戸川乱歩:「芋虫」
今日泊亜蘭:「最終戦争」
辻真先:  「名古屋城が燃えた日」
荒巻義雄:「ポンラップ群島の平和」
星新一: 「ああ祖国よ」


 2016/4/20読了
 /つかこうへい正伝 1968-1982
 長谷川康夫
 つかこうへいの小説やエッセイはほぼ読んでいて自分の中ではとても重要な存在に
 なっているが、肝心な舞台は残念ながら観ていない。
 その舞台や舞台裏を語る著者の当時の熱意が伝わってくる。
 つかこうへいの才能を改めて感じさせてくれる評伝だった。
 平田満がつかこうへいの評伝を書いたら是非とも読んでみたいが、黙して語らず、
 という語り方もあるしな。
 何枚かの写真が掲載されているが、ラストの写真から伝わる雰囲気が、
 なんだか良い。



 2016/4/25読了
 /邪眼: うまくいかない愛をめぐる4つの中篇
 ジョイス・キャロル・オーツ
 副題に「うまくいかない愛をめぐる4つの中篇」とあるが、ただの恋愛小説だと
 思って臨んではいけない。
 ちょっとした感情の行き違いだと思いきや、やたら振幅の大きい残酷で気持ちの悪い
 展開に驚かされる。
 この闇加減、歪みっぷりがオーツらしくてぞくぞくする。



 2016/4/30読了
 /天下一の軽口男
 木下昌輝
 これまでの血生臭い作品も良かったが、一転して人を笑わせたい、好きな人を
 笑わせたいという米沢彦八の一生を描いている作品。
 笑いを追及するその姿に泣かされます。
 そして木下昌輝さんからますます目が離せません。



 2016/4/30読了
 ::暴走する正義: 巨匠たちの想像力[管理社会]
 筒井康隆/星新一/小松左京/水木しげる/安部公房/式貴士/半村良/山野浩一/光瀬龍

 

 既読感がある筒井康隆の「公共伏魔殿」は公共放送局に対する毒が、筒井らしい。
 式貴士「カンタン刑」は有名作品なだけのことはあるグロさ。
 半村良の「錯覚屋繁昌記」は「岬一郎の抵抗」を思い出させる超能力もので
 懐かしさを感じた。
 既読の星新一「処刑」、安倍公房の「闖入者」は、やはり安定の面白さ。
 「処刑」は今読んでも古さを感じさせないところが凄い。
 ただアンソロジーとしては【管理社会】で括るには、ちょっと無理があるような
 気がした。

 

筒井康隆:「公共伏魔殿」
星新一: 「処刑」
小松左京:「戦争はなかった」
水木しげる:「こどもの国」
安部公房:「闖入者」
式貴士: 「カンタン刑」
半村良: 「錯覚屋繁盛記」
山野浩一:「革命狂詩曲」
光瀬龍: 「市二二二〇年」



6冊読了。