吉祥読本

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13 --古川日出男

古川日出男のデビュー作をようやく読みました。
うん、長い!ちょっと長くて疲れました。
アラビアの夜の種族も長かったけど、比べると圧倒的にこちらのほうが読みにくい(苦笑)

 

片方の目だけが色弱で、普通の人とは違う世界を見ることができる主人公の橋本響一は
知能指数が高い半面、人付き合いが苦手で孤独な少年時代を送る。
ザイールから来た留学生ウライネとの出会いが彼を刺激し、中学を卒業すると同時に
ウライネの住むジャングルへ一人旅立つ。
別に並行してローミという現地の少女の話しが進行する。
内戦時に13の認識票を持つ傭兵とローミとの出会い、それがもたらす神としての運命が語られ響一とローミは出会う。
まあ、いつもの通り、選ばれし者たちが運命的に出会い、新しい次元の世界を切り拓いていく物語なので古川作品の基本形でもある。

 

デビュー作なのでその後の作品の片鱗があちらこちらに漂っています。
特に「アラビアの夜の種族」、「サウンドトラック」、「ベルカ、吠えないのか?」はこの作品の中にあった種子が芽を出したものでしょう。
サウンドトラック」の感想でも書いたのですが、「サウンドトラック」ほどではないけれどやはり村上龍の初期作品の影響を感じます。

 

文章のリズム感はあるにはあるのですが、やはりデビュー作のためか、ちょっと冗長さも感じます。
もう少し短くても良かったはず。半分でもよいかと(笑)
リズム感は徐々に洗練されてきたんだな、とも認識できました。
前半のエネルギー溢れる流れは良かったのですが、第二部の映画がらみの話しになってくると失速したように思います。むしろ一部だけで完結させる手はなかったのだろうか。

 

初めての古川作品にこれを選ぶと、読者の4割程度は次の作品を読まなくなりそうな気がします。
何作か読んでから古川さんの原点を読んでみたい人は、読んでおいてもいいかもしれません。
自分はそれで正解だったと思います。
こんなことで「聖家族」読破がデキるだろうかと、ちょっと不安が増したのですが、
積んでる作品がまだあるのでそれを読んでから挑戦するか、考えたいと思います。