吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ゲルニカ ピカソが描いた不安と予感 --宮下誠

二〇世紀の西洋美術を代表する『ゲルニカ』は、描かれた当時、多くの人に衝撃を与えた。
この作品は、一九三七年という、ナチズムやロシア社会主義、フランス、ドイツ、イギリスなどの列強の思惑が交錯し、スペインでは内乱が激化するという、ヨーロッパが不安と緊張に包まれた時代に生み出された。しかし、『ゲルニカ』には絵画としての「異質さ」が漂う。そして、これこそが、不安が先鋭化しつつある私たちを今でも虜にする魅力でもあるのだ―。本書では、その製作過程を丹念に追いながら、美術史、歴史画、戦争画などの観点からピカソが直感した「予感」に迫る。さらに、私たちの美術鑑賞のあり方、一枚の絵を見つめるということの本質にまで思いを巡らす。
(「BOOK」データベースより引用)


大げさかもしれませんが、死ぬまでに観ておきたい絵のひとつにピカソの「ゲルニカ」があります。
うちの相方は実物を観たことがあるそうで、観た瞬間、絶句してしばらくその場で圧倒され続けたそうです。
チクショウ!圧倒されたい!と思っていたため、この本が平積みされた時に躊躇なく買ってました。

たったひとつの絵を色んな視点で解析している著者(大学教授)の文章は、美術の素人である自分にも
わかりやすく、まるで直に講義を受けているかのような熱気を感じながら楽しめました。
はっきり言って、思っていた以上の面白さで大満足です。

ゲルニカという作品の歴史、制作過程、美術史からみた位置づけ、戦争画としてのゲルニカ等々、
いちいち「へぇ~」とうならされる。
個人的に一番楽しめたのは制作過程の写真で、ゲルニカで描かれている牛や馬や兵士の
描き方の変遷が一目瞭然であり非常にわかりやすく、ピカソの考えていたことがほんのりと
浮かび上がってくるようでした。これだけでもかなり貴重な資料ではないでしょうか。

一枚の絵を考えることは、世界をよりよく理解することにほかならない。
(「おわりに」より引用)

まさしく一枚の絵からよくもこれだけの考察ができるものだと、その熱意と見識に敬服するばかりである。
あ~、やっぱり観たいぞ!!