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天才の栄光と挫折-数学者列伝 ::藤原正彦

自らも数学者である著者が、天才数学者―ニュートン関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ
ラマヌジャンチューリング、ワイル、ワイルズ―九人の足跡を現地まで辿って見つけたものは何だったのか。
この世にいて天国と地獄を行き来した彼らの悲喜交々の人生模様を描くノンフィクション大作。
(「BOOK」データベースより引用)

 

先日読んだ「天地明察」をきっかけに関孝和に関する本を読みたくなりました。
天地明察の主人公「渋川春海」にも言及されていて、思っていた以上に楽しめました。
渋川春海に関してはすっかりいい印象を抱いてましたが、関孝和側から見るとちょっと微妙な感じが(笑)

 

先日、天地明察にでてくる金王八幡神社にも行ってみましたが3枚ほど算額絵馬が残されていました。
絵馬は思っていたよりも大きくて(肩幅より大きいくらい)、図には着色まで施されていました。
形も扇形だったりして普通の神社の絵馬を想像していたので意外でした。
問題を出していた人の名前のところには「関流」と書いてあって、まさしく関孝和の流派の事でしょう。

 

大幅に話がずれましたが、関孝和の業績は素晴らしいものだったこと、その割りには不遇な人生を
送っていることなどがわかり、ちょっと同情。もっと正当な評価があってもよかったのに。。。。

 

本書に出てくる他の数学者の名前はニュートンくらいしか知りませんでした。
全体的に短い文章でその人の人生が書かれているのですが、数学的な難しい話ではなく
まさしく各人の人生のダイジェストだったのですらすらと読めました。
いずれの天才の話も興味深く、もう少し掘り下げて読みたかったと思う反面、
きっと掘り下げると数学的な話が大部分を占めそうなのでこれぐらいがいい按配かもしれません。

 

印象的な人としては文学的素質も会った女性のソーニャ・コワレフスカヤ
エニグマの解読やコンピュータの父としての実績を残しながら、同性愛者だったがゆえに
不遇な死を遂げたアラン・チューリング、「フェルマーの最終定理」を証明した
アンドリュー・ワイルズの3人でしょうか。

 

ソーニャ・コワレフスカヤは数学的な功績だけではなく、小説も書いてしまう才人で、文系理系の壁を
易々と越えている人です。理系だからとか文系だから、などと言い訳しにくくなります(苦笑)
暗号解読で母国に貢献しながら秘密を握る危険人物とされ、冷遇されるアラン・チューリングに関しても
同情を禁じえません。コンピュータの父といえばフォン・ノイマンが浮かびますが、
チューリングの名前をきちんと頭に刻み込んでおかないといけませんね。
そして有名な「フェルマーの最終定理」と正面切って闘ったアンドリュー・ワイルズの粘り強い人生には
感銘を受けましたが、更に驚いたのは「フェルマーの最終定理」には多くの日本人の功績が関係していた事。
数人の日本人の功績がこの数学界の大定理の証明に大きな影響を及ぼしていたということは
同じ日本人として嬉しく思いました。更に基を辿れば関孝和にも繋がるんだろうなあ。。。

 

数学というのは一人の天才がゼロから何かを作り上げるのではなく、多くの天才たちの実績を積み重ねて
進歩していくということが伺い知れます。

 

これで長い事積みっぱなしの「フェルマーの最終定理」にチャレンジできそうです。
今年中には絶対読むぞ!って、う~んまだまだ弱気です(苦笑)