吉祥読本

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民王 ::池井戸潤

テレビやラジオから流れる「小鳩政権終焉」騒ぎを聞き流しながらこの作品を読んでいました。
本書の主役は自民党政権の末期状態だった頃の政治家がモデルです。

 

空飛ぶタイヤ」や「鉄の骨」をはじめとする骨太ながら痛快エンタメを送り出してきた池井戸さんが
政治をネタに作品を書くとなったらそれだけで期待大。
右往左往している日本政府にうんざりしている時になんとタイムリーな作品でしょう。



で、



ビックリしました。

 

全然違う。。。今までと全く違う。。。。

 

なんていうか、コメディ?マンガ?というくらい砕けた作風に戸惑いました。
正直、期待していたものと違いすぎます。
求めていたものとは違いましたが、ここまで揶揄されているのに妙にリアルを感じさせる
政治家たちの姿に苦笑いしてしまいます。
希望としては漢字が読めなかった首相や酩酊していた閣僚などが、
本作に描かれていたように陰謀に巻き込まれたがゆえにあんな醜態を晒したんだ、と思いたい。

 

軽いタッチとは言えそこは池井戸さん、楽しめる部分も勿論あります。
銀行の面接での対決、予算審議をすべきところでの啖呵、無責任な政治評論家との対決など、
池井戸作品ならではの熱さには大いに共感しました。
反面、電波が遮断されているはずの部屋で携帯電話で会話をする公安の刑事とか
ドタバタの原因となる技術の安易さとか、全体的にストーリー展開や装置が
取って付けたような粗さを感じました。

 

この題材を池井戸作品らしからぬ演出で書き上げた政治への皮肉は、
ある意味ピッタリなので理解できますが、青臭さを全面的に出す必要は無いとしても、
政治という新機軸で骨太感漂う作品執筆に改めてチャレンジして頂きたいというのが率直なところです。