吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

あの戦争は何だったのか --保阪正康

本書は一昨年に購入してずっと本棚で眠らせていたのですが、本作品を基にしたテレビ番組が
放送されることを知り、先日急遽読みました。
まさかこの本で番組が制作されるとは思っていなかったので慌てましたが、
新書とはいえあっと言う間に読めました。

 

この手の本は昔から読んできましたが何冊読んでも、理解できないことがいっぱいあります。
日本として日本の歴史、行動に関する総括がほとんど行われていないため、
混在した見解が複雑に絡まりあっていることが原因だと思っています。
感情的ではなく、歴史にある裏と表を冷静に解析することはとても大切な事だと思います。

 

本書で一番分かりやすかったのは軍部の定義、統帥権や行政権の違いの説明でした。
今まで読んでいた本では何度読み返しても統帥権というものがイメージできなかったのですが
組織体系を図で示してくれた事でかなりスッキリしました。
(完全に理解はできていませんが。。。)

 

また、陸軍出身の東條英機が陸軍の暴走を押さえるために首相に任命された、という認識はありましたが
実は海軍が主導で戦争に至ったという見解は、はじめて接したと思います。
更に戦争に走り出すスタートラインが「二・二六事件」にあるという見解も作者は示していますが
人間の心理としてはそれもひとつの原因としては有りかもしれないなと思いました。

 

ただ、個人的には気になる点もありました。
真珠湾攻撃に至る経過がかなり省略され、アメリカの思惑に関する記述がほぼないことや
日本には石油の備蓄は2年分ではなく4年分はあった、という点に至っては少し無理があるように思いました。
また細かい事ですが戦艦大和が米艦隊と「遭遇」し撃沈されるに至るという記述には違和感があります。
「遭遇」という言葉には「偶然」というニュアンスを感じるからです。



とは言え、全体的にビジョンのない戦争だった、という見解にはある程度納得できますし、
過去の日本の問題を考えるためのとっかかりとしては読みやすく簡単なので、
その点は素直に評価してもいいのかなと思いました。
いずれにしても物事には裏表があることを考えれば人により歴史の見方が変わることは
仕方がないと思うので冷静で客観的に色んな方向からの検証は必要なんだと思います。



折角放送前に読み終わっていたのに、残念ながらテレビは途中からの視聴となってしまいました。