吉祥読本

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ホルモー六景 ::万城目学

せっかく持っているのに「鴨川ホルモー」を再読しておけばよかったと少し後悔しながらようやく読むことができました。

 

完全な続編だと思い込んでいたが、6つの短編で構成されたスピンアウト作品でした。
前作より高度な戦術と共に熱い戦いが展開されることを期待していたのでちょっと肩透かしを食わされました。

 

が、しかし、だからといって駄作だったわけではありません。
短編ではありますが、小説としての洗練度はむしろこちらのほうが上ではないでしょうか。
鴨川ホルモー」や本作の短編同士、さりげないリンクがあるが独立した物語として展開しつつ背景にはきっちりホルモーが組み込まれ、いやホルモーに組み込まれている。
恋愛絡みが多いが、しっかり受け止める事ができたつもり。

 

どの話もそれぞれの味わいがあって良かったのだが、「もっちゃん」の章には驚かされた。
本作中で最も感動的であり、いきなり世界観が広がった仕掛けにも参った!
万城目学の力を見せ付けてくれました。やりますなあ。

 

別の形で素直に感動したのが「長持の恋」。時空を越えたSFっぽい設定だが
切ない恋愛ストーリーを堪能できました。柏原大鍋、小鍋兄弟は実在したんですね。
これは全体的に言えるのですが登場人物の名前なども歴史とのリンクが多い。

 

「丸の内サミット」では東京でもホルモーが行われていることを示唆されていたが嬉しい反面、想像するに東京はちょっと雰囲気が合わないと思います。
将門の首塚は何度か行った事があり、確かに色々と都市伝説めいたことを聞きますが
場所としてはピンポイントすぎると思います。
甲子園なみにホルモーの全国大会ってことも考えられますが、やはり舞台は京都に限ります。

 

この夏、京都に行ったおかげで作品に出てくる場所が結構理解できたのもより効果的に楽しめた要因かもしれません。
鴨川べりの交番が出てきたときなど、おお!ここでお世話になったっけなあって思ったり(涙)

 

ホルモーを共に叫ぶことができないテンションではありましたが、どこか切なく、懐かしさを感じさせるような、そんな物語たちをしっかり堪能させてくれる作品でした。
ところで続編は、ないのかなあ。。。共にホルモーを叫べるような熱~いストーリーをプリーズ!