吉祥読本

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フェッセンデンの宇宙 ::エドモンド・ハミルトン

奇想コレクションの読破を目指し、ひと月一冊ペースで読むことを今年の目標の一つにしていました。
自ら勝手に課したノルマではありますが、何とか今年12冊目の奇想コレクションの感想をアップすることができました。このペースだと来年の夏に読破できそうです。まだまだだな。

 

「フェッセンデンの宇宙」 「風の子供」 「向こうはどんなところだい?」 「帰ってきた男」「凶運の彗星」 「追放者」 「翼を持つ男」 「太陽の炎」 「夢見る者の世界」 の9篇。

 

古い作品のため目新しさは薄れているし、科学的根拠があまりない発想の作品が多い。
昔懐かしの空想世界のような懐かしさを感じます。

 

まず表題の「フェッセンデンの宇宙」は、ちょうど一年前に書いた感想「幼年期の終り」に書いた小学生の頃に見た夢を小説にしたかのような作品でした。
ちなみに子供の頃この作品は読んでいないし人から聞いた記憶もありません。
科学者が作り出した宇宙は自分の属する宇宙の存在への疑問へと向く、深く考察すれば
神とはなんぞやみたいに小難しく解釈することもできるが、子供にでも発想できるレベルの内容でもあるわけだ。懐かしい人に会ったような読後感でした。

 

「風の子供」は風に育てられた子供が風の聖地から旅立とうとするファンタジーのような作品。
きっかけは何であれ子供の成長物語として読みました。

 

「向こうはどんなところだい?」は火星での過酷な任務から生還し、英雄扱いされている男が、火星で失った仲間たちの家族に会いに行く話です。
悲しみにくれる家族を満足させるために本当のことを言えない男の孤独感、寂寥感を描いています。
わかっていても嘘をつき通してもらいたい、そんな時だってあります。

 

「帰ってきた男」は結末がすぐにわかってしまうユーモア漂う典型的なストーリーです。
棺桶の中で目が覚めたら、どんな行動をとるのが幸せなんでしょうね。遺族にとっても(苦笑)

 

「凶運の彗星」は宇宙からの侵略を描いていますが、知識の乏しい自分でもちょっと無茶な展開だなあと思うこともありました。
子供の頃であれば「おお、スゲー」と素直に楽しめたことでしょう。

 

「追放者」はショートショート作品で、これも今となってはありがちな発想なので展開が読めてしまいます。作家さんはやはりこういう作品を一回は書きたくなるんだろうなあ。

 

「翼を持つ男」は翼が実際に生えてきてしまう男の話。
「肩甲骨は翼のなごり」を彷彿させますが、人間として生きていこうとする決断と、募る空への想いが切ないです。

 

「太陽の炎」は、読んでいてクラークの宇宙の旅シリーズで出てくるスターチャイルドをイメージしました。
水星探査で目撃した「何か」を語ることなく職を辞した男。彼が見た絶望を希望に転化したのがクラークの作品なのかもしれない。

 

「夢見る者の世界」は砂漠の英雄と平凡な生活を送る男の夢、どちらが本当の現実なのか、どちらも現実なのか、どちらも夢なのか。そんなストーリーでスペースオペラ的な印象の作品。
夢への干渉などは最近も読んだばかりだが(パプリカ)これも映像で見るほうが楽しめそうな作品。



全体的に古臭さを感じるがそれは仕方が無いところ。
しかし「フェッセンデンの宇宙」を読めたことは自分の夢との再会のように嬉しかったし、それ以外では「向こうはどんなところだい?」が良かったかな。

 

今年の奇想コレクションはこれにて。