吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

たんぽぽ娘 ::ロバート・F・ヤング

出る出ると予告されながら延ばし延ばしになっていた本書が先月ようやく出ました。
そして奇想コレクションもこれにて最終、都合20冊のシリーズを無事読破でき、まずはメデタシメデタシ。



たんぽぽ娘」は今やすっかり有名な作品になったようですが、この作家さんは
美しい愛をテーマにしているのでしょうか、SFとロマンチックストーリーを絡ませていることが多いようです。
美しい愛というのは曖昧な表現ですが、純真無垢というかなんら駆け引きの無い状況というのでしょうか。
相手のために自分の純粋な気持ちを優先している、言葉を悪くするとぶっきらぼうというか細やかさに欠け脈絡がないとも言えます。意味が分からないと思いますが(笑)

 

たんぽぽ娘」は今回の作品群のなかではうまく纏まっているので評価されるのも理解できます。
ただ、実のところロマンチックなストーリーを特に欲していないロマンチストなので
「荒寥の地より」「主従問題」の2作品のほうが個人的には評価を高くしています。

 

特に「荒寥の地より」は遺作だったとのことで読み手としては感慨も一入です。
勿論本人としては遺作として意識して書いたわけではないですが。
この作品も詰まるところ「愛」を描いているのだが、男女間のそれとは違う、
もっと大きな意味での愛を描き、読んでいて何とも切なさを感じてしまいます。

 

それに比べると何ともあっけらかんとしてミステリアスな展開の「主従問題」は
最終的に疑心暗鬼な男女のある意味ハッピーエンドを描いた適度なさっぱり感が良かったのでしょう。

 

命の駆け引きを背景に理解を深める男女間の緊張感漂う「神風」も面白い作品ではありました。
が、日本人としては気になる題名です。

 

あとの作品もまあまあ読めたのですが、期待感の高さが裏目に出たのか、これが奇想コレクションの締めとして妥当だったのだろうかと疑問が残ってしまいます。
古い作品たちなので今となってはアイデア、展開等目新しさがないのは仕方がないと
理解しているつもりですが、それでも物足りなさを感じます。



何はともあれ、これにて奇想コレクションは終了しました。
読み解くのに苦労する作品が多かったのでかなり鍛えらました
(いや読み解けない作品も多々あったけど)
おかげで海外文学が読み易くなったこと、感謝しています。
シリーズを読破した暁には、心に残るベスト10でも抽出しようなんて漠然と考えていましたが、残念ながら間が空きすぎてしまってかなり忘れてしまいました(苦笑)



最期に、最近の作品を読んでいて、これは奇想コレクションにラインアップされてもいいのでは? と思う作家さんが何人かいます。
この作品の直後に読んだジョイス・キャロル・オーツは、まさに奇想コレクションって感じでした。
まだまだ面白い作家さんはいるので、奇想コレクションは今後も刊行してほしいと思います。
日本作家さんバージョンとかもね。

 

このシリーズはすべて感想をアップしていたので、久しぶりの単独作品で書いてみましたが多少時間をかけてもうまく纏められなかったのは、残念無念(苦笑)



(6/5読了)

 

作品リスト
 「特別急行がおくれた日」「河を下る旅」「エミリーと不滅の詩人たち」「神風」
 「たんぽぽ娘」「荒寥の地より」「主従問題」「第一次火星ミッション」
 「失われし時のかたみ」「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」
 「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「スターファインダー」「ジャンヌの弓」 の13編。