吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2017年11月の読書リスト

今年は近くの公園の紅葉が綺麗です。だいぶ散ってきたけれど。
それにしても寒さが厳しくなってきました。もう師走。
読書は11月末に急ブレーキがかかってしまいましたが、ラストスパートかけましょか。仕事もね。



 2017/11/6読了
 /海の地政学
 ジェイムズ・スタヴリディス
 NATO欧州連合軍最高司令官だった著者が自らの経験を語りつつ、七つの海を
 めぐる歴史、海事史が如何に世界情勢に 影響を与えてきたかが平易に
 説明されている。
 題名から勝手に現代の海の地政学を期待していたため、もう一歩踏み込んだ内容が
 欲しかった。
 今後の日本のとるべき戦略を知るには物足りないが、全体的に基礎を知るには
 ちょうどいいかもしれない。



 2017/11/10読了
 /日本の外交: 「戦後」を読みとく
 添谷芳秀
 戦後日本の外交を振り返り、現在に至る問題点や今後の外交がどうあるべきかを
 提示している。
 日本は米中露のように国際社会に大きな影響を与える大国を目指すのではなく、
 オーストラリアやカナダのような中規模の国としての外交を展開する方向性は
 理解できるし賛同もする。
 ただ、対アジアではやはり歴史認識の問題をネックとしている。
 そこにのみ焦点を絞って自国の主張だけが正しいと言い張る国や、約束を守る気が
 無い国に対しては結局のところ何の解決にもならないのでしょうね。



 2017/11/13読了
 /パーマネント神喜劇
 万城目学
 「バベル九朔」の影響もあって、実はこの作品全然期待していませんでした。
 そのせいか、思っていたよりも楽しめました。
 縁結びの神様をメインとした4つの短編はひとり語りのため最初こそ
 読みにくかったが慣れるとマキメ作品らしくとぼけた中に暖かさが漂い読後感は
 悪くない。
 他作品とのちょっとしたリンクもあり、かのこちゃんが元気そうで何より。
 楽しめたとはいえ、本当のところはもう少しきっちりと書き込んでほしかったかな。
 期待して読んでいたら、ちょっとな~って感想になりそう。


 2017/11/20読了
 /路地の子
 上原善広
 気になる作品がいくつかあったのだがようやく読めた。
 大阪の「路地」を描くノンフィクションだが、あっという間に引き込まれた。
 食肉業界で生きる龍造の逞しさや気性の激しさも圧倒的だが、彼を取り巻く環境も
 凄まじい。
 同和利権共産党、右翼、暴力団等々の思惑が複雑に絡み、誰が味方で誰が
 敵なのか分からなくなる。
 あとがきでこの作品の描かれた意味が伝わってきた。

 

 
 2017/11/22読了
 ::Gene Mapper -full build-
 藤井太洋
 短編をいくつか読んだだけの作家だが、ケン・リュウの「母の記憶に」に寄せた
 エッセイをきっかけに読むことに。
 なかなか読ませてくれるが、遺伝子工学はともかくARやIT関連の知識が無いと
 入り込みにくいかもしれない。
 遺伝子デザイナーという主人公の仕事は今は成立していないが、遺伝子がらみで
 起き得るだろう問題提起が既に現在議論されているのでリアリティがある。
 ホーチミンが主舞台となっているのも意味があり、物語に厚みを出している。
 肝心の主人公のキャラが弱い印象だが、他作品を読んでみようと思わせる
 デビュー作だった。



 2017/11/26読了
 /スペース金融道
 宮内悠介
 題名からコメディであることは感じていたが思っていた以上のドタバタ系。
 思わずクスッとしてしまう展開もあり、こんなタイプの作品も書けるんだなあと
 唸らされる。
 新星金融はアンドロイドを主に顧客としているが、返済さえしてくれるならバクテリアだろうがエイリアンだろうと融資し、取り立て屋のぼくと上司ユーセフは
 取り立てのためならどんな場所にでも赴く。
 ふざけているようでストーリーは案外深くてテンポも良く気分転換には
 もってこいの作品。
 続編があってもおかしくない内容なのでちょっと期待しておきます。




6冊読了。