著者:宮内悠介
出版社:幻冬舎
明治時代末期。
若き芸術家たちがセーヌ川に見立てた隅田川河畔の料理店「第一やまと」に集い、
芸術を語り合うべく「牧神(パン)の会」を定期開催する。
その会合で様々な事件の話をメンバーが推理するという形式。
著者が明かしているようにアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」を
アレンジしているとのこと。
存在は知っているが「黒後家蜘蛛の会」関連の作品は読んでいない。
が、問題無し。
「パンの会」は実際にあったようだが、全く知らなかった。
知っている名前もあれば知らない名前もあり(知らない名前のほうが多いが)、
この時代の芸術に疎いことが我ながら情けないくらいだが、
内容的には読み易いので気にしない気にしない。
一話ごとに挙げられるディープな参考文献の多さを考えると
想像というより本来の人物像にかなり近づけているのではないかと思われる。
肝心の推理に関しては盛り上がりに欠ける。
雰囲気は時代を感じさせていいのだが。
最後の話しのみ宮内悠介らしさが感じられるトリッキーで不穏な内容が面白かった。
予測通り、題名にある「彼女」の正体は最後に明かされるが、
特に大きな驚きが無かったのは、この時代の芸術家や
文筆家に対する自分の知識不足によるものでしょう。