吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

童夢 --大友克洋

大友克洋は「AKIRA」からはいったので、「童夢」を読んだ時は「AKIRA」の凝縮版じゃん!
って思いました。
AKIRA」よりも前に出版されているので、これを広げたものが「AKIRA」なんでしょうね。
なので両作品でひとつの記事にしようかとも思ったのですが、
童夢」だけでも十分面白いので独立させる事にしました。


 舞台は団地。そこで繰り広げられる「子供のような老人」と「団地の子供たち」が超能力で対決する。
 簡単に書くと展開はこんな感じです。簡単すぎますが(笑)
 漫画で初めて日本SF大賞を受賞した作品でもあります。


とにかく大友克洋の凄さは「視点」「カット割り」にあるでしょう。漫画だからコマ割りか。
もともと映画製作を志向していたためか、やたらと映像的です。
演出の仕方も、さりげなく淡々とした日常の中で繰り広げられる非日常が徐々に緊迫していく
その描き方や「間」のテクニックは秀逸です。
可愛さを強調しないちょっとリアル?な子供たちの描き方もいいですね。


団地を俯瞰で、なおかつ見開きを使って描き、その一部で「どさっ」という吹き出しだけ。
何かが起き始めているシーンなのだが、それだけで引き込まれます。
デフォルメして何かが起き始めるところをアップで描くほうが親切なのかもしれませんが、
「前兆」を描くにはそんな描き方のほうが読み手に伝わるし、想像を掻き立てるのではないでしょうか。

それにコマの細かいところにかなり気を遣っているなあというのも良くわかります。
目立たないところでちゃんと後のコマにつながる小さい書込みが仕込まれています。
だから読み飛ばすと損をします。
細かくしっかり描き込まれる画は、じっくり味わうことができて読み飛ばしにくいですけどね(笑)
何度か読むとその都度発見があるのも緻密な構成、計算があるからだと思います。

ヘタな小説読むより深くて面白い作品である事は間違いありません。
読んでいない人は、ただの漫画じゃんと言わず、読んでみてくださいな。


ところでこれ、映像化できたら面白いと思うんですがやっぱり難しいんでしょうねえ。
満足いくものを作るには厳しい作品だと思うので、本当は映像化しなくていいと思う作品でも
あるのですが、でも観たいなあ。。。。
あ、映像化って言っても実写じゃないですよ!それだけはやめてほしい!!


鉄コン筋クリート」等のクオリティを考えると、そろそろイケルかもしれないなあ、
な~んて思っているのですが。