吉祥読本

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東京バンドワゴン --小路幸也

小路幸也さん初読みです。本書は、

 

「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ、」

 

と言う言葉で締められているように、昭和の大家族ドラマへのオマージュと考えていいでしょう。
寺内貫太郎とか時間ですよなどを見ていた人には懐かしい世界ですね。



「BOOK」データベースより引用

 

明治から続く下町古書店東京バンドワゴン”ちょっとおかしな四世代ワケあり大家族の
ラブ&ピース小説。



いいですね、古書店&カフェ。憧れます。名前は古書店ぽくないですけど。
それにしても四世代そろうとやっぱり賑やかなんでしょうね。
登場人物が多くて何度か確認しながら読み進めました。
関係図と登場人物の紹介が掲載されていたのは助かりました。
みんな良い人なんですよね。善良だなあって思えるひとばかり。
結局悪い人がいないんですよね。
自分がここに紛れこんだらきっと落ち着かない気もします(笑)
意味もなく、反省ばかりしていそうです。



死んだお婆ちゃん、サチさんが語り部なんですよね。
死者の語り部といえば、乙一「夏と花火と私の死体」の少女が浮かぶんですが(笑)
このお婆ちゃん、ほのぼのしていて優しい感じでとってもいい味を出してますね。
(比べちゃいけませんね。)

 

古書店店主の勘一爺さんと、その長男である内田裕也を彷彿させる伝説のロッカー我南人、
さらに我南人の長女、長男夫婦、その子供たち、我南人の愛人との間にできた次男、
そして忘れちゃいけない語り部のお婆さん。
さらに近所の人たちやその他モロモロ。いっぱいです。
ネコもいましたね。4匹。ベンジャミンは私の2代目のPCの名前でしたが関係ありませんね。

 

お嫁さんもや小学生の子供たち、近所の人たち含めてそれぞれみんなに
物語りができそうなキャラなんです。
(続編があるのはそのせいでしょうか?)

 

唯一、難をあげれば、ひとりひとりのキャラクターは面白いんですが人数が多いぶん、
ちょっと深みに欠けてた気がします。さっぱりし過ぎの印象を受けました。

 

それぞれの話しに差し込まれるちょっと不思議な話しもいいですね。
2冊の百科事典が人知れず棚に増えたり減ったりする話しや大量の蔵書が一晩で無くなったり、
我南人の愛人の話しとか。
ミステリーというほど大げさな話ではありませんが。

 

それぞれの役割がちゃんとあるのですよ。
お爺さんにはお爺さんなりの。お父さんにはお父さんなりの。
子供には子供なりの。お嫁さんにはお嫁さんなりの。お婆さんにはお婆さんなりの(笑)

 

自分の役どころがわかっていて、控える時は控え、人を尊重するっていう
昔ながらの日本人の姿があるんです。



この作品で一番のお気に入りのキャラは伝説のロッカーの我南人ですね。還暦ですけど(笑)
普段はフラフラほっつき歩いているし、とぼけたことばかり言っているのに、
い~い時に現れちゃ、キメテくれるんです。
おいしいところをもっていくちゃっかり者ですが憎めません。案外しっかり者なのでしょうか。
格好良いじゃありませんか。
ああ、お婆ちゃんもとぼけてますねえ。似ているのかもしれませんね。

 

とりたてて大きな事件があるわけでもなく、ほのぼのしたストーリーは
ぬるま湯につかっているかのような心地よさでした。
たまには気を抜いてのんびりした世界を味わうのもいいものです。
現代のはなしですが、よき昭和の時代の匂いがたっぷりですねえ。
LOVEなんですねえ。