吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

零式戦闘機 --柳田邦男

柳田邦男の代表作は沢山ありますが、中でも「零式戦闘機」(ゼロ戦)のような
技術モノのノンフィクションはとても興味深く読んだものです。
内橋克人さんの匠の時代 同様、のめり込むように読んだ一冊です。



子供の頃、ゼロ戦のプラモデルとか作るのも好きだったのですが、
第二次大戦ものの本を沢山読んでいたので、ゼロ戦に関する情報にはとても敏感でした。
国立科学博物館に展示された実物を見たときは興奮したものです。

 

本書はゼロ戦を設計した堀越二郎さんら技術者に焦点をあて、当時、
世界最高の戦闘機だったゼロ戦を開発する過程を追うゼロ戦プロジェクトXみたいなものです。
堀越さん自身にキッチリ取材をしているので技術者の視点や創意工夫が良くわかります。
技術者に焦点を当てているので当然ですが、日本が自前で戦闘機を作る計画から
真珠湾攻撃までの間の話です。

 

とにかく、軽量化一つとっても(航行距離もおおいに関係しますが)技術者たちの
徹底的に考え抜く執念、熱意が良く伝わってきます。
日本のものづくりの原点と言えると思います。
航空技術の著しい進歩が、日本を戦争に一歩近づけてしまった側面もあると思いますが。。。



ゼロ戦の軽量化にはとても大事なものを捨てる選択が為されています。
それは燃料タンクを守らない選択でした。一発で致命的な損害を負うと言う事です。
とにかく操縦士の腕と先制攻撃が出来る性能でカバーしようという発想の日本と
操縦士の命を守るためにとりあえず速度を犠牲にしたアメリカの発想の違いひとつとっても
両国の明暗を分ける結果につながったように思います。



それにしても目標をもったときの日本の技術者っていうのは頼もしいです。
まじめなのは当然として不屈の精神というのはおおいに見習わないといけないと思います。
完璧な結果はでなかったとしても制約の多い中で、技術後進国が世界一の飛行機を作ったということは
日本人として誇りを持ってもいいでしょう。

 

戦争に負け、日本の技術力は解体、封印され、いまや航空分野では取り残されてしまいましたが
是非自信をもって新たに航空、宇宙分野でトップに躍り出て欲しいものです。

 

ただし、これから新たに航空、宇宙分野の開発競争に全面的に突入した場合は「軍事利用」
という言葉も国内外で頻繁に出てくる事になるでしょう。

 

それでもあえて思うのです。
日本が得意な分野で活躍し世界に貢献している姿が見たいと。
技術の結晶を新たな分野で、新たな技術で世界に挑んでいる技術者たちの姿を見たいと思うのです。
そんな推進力を得て活気付く日本を想像すると楽しくなります。



こういう作品は、技術的知識は無いのに自分も参加しているかのような感覚を味わえるし、
何かを達成する物語を読むと自分のことのように元気が出てくるので大好きです。




話しは飛びますが、吉村昭さんも同名の作品を出していて評価が高いようですね。
そちらも是非読んでみたいと思っています。

 

と、思ってから幾年月も経過しているのですが。。。。。。。