吉祥読本

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星新一時代小説集 地の巻 --星新一

「ねずみ小僧次郎吉」「藩医三代記」「かたきの首」「島からの三人」
「元禄お犬さわぎ」「厄除け吉兵衛」
松本大洋氏がイラストを添えているコラボ第二弾の短編集。

「ねずみ小僧次郎吉」
 次郎吉がねずみ小僧をはじめた過程と、その名声をあっという間に掠め取られる顛末が描かれる。
 いいことをしていても、いいことが帰ってくるとは限らない。

藩医三代記」
 海沿いにある小さい藩に仕える医者の三代にわたる顛末が描かれる。
 努力家の創業者、巧く立ち回り家を拡大する二代目、その名声を崩壊させる三代目の、
 よくある話を淡々と進行させるが星新一の経験がチラリホラリ?

「かたきの首」
 かたきうちをする者、狙われる者いずれも途轍もない苦労が待っている。
 その苦労を利用する輩が跋扈する。
 一見、不届き者めがと思いつつも、全ての人間が納得するのであればそれはそれで幸せか。
 知らぬが仏。

「島からの三人」 
 昔は罪を犯さなくても遠島なんてことはよくあったことなんだろうか。
 島送りにされた三人が通常では考えられないほど短期間で江戸に戻される。
 その理由とは。。。理不尽だが、形をかえて今でもよく聞く話だ。

「元禄お犬さわぎ」
 動物よりも人間の命のほうが軽いのか?と思わせる有名な悪法の裏側が描かれるが
 無意味なものが官僚制度とその関係者たちの思惑でエスカレートしていく様は、
 現代にも思い当たるものが会って、案外これが真実なのではないだろうか。

「厄除け吉兵衛」
 占いとかにガッツリはまっている人が廻りにいると鬱陶しい。
 あっちの方向がいいとか今年はアレをやるなこれをやれ、
 この色が効き目があると押し付けられても。。。親切なだけに無碍にもできず。そんな人の話。


どの話も淡々と江戸時代を描くが、不条理でどこか醒めた星新一の目線が心地よい。
ビックリするような結末が待っているわけでもないが、ああ、こんなことあるなあみたいな身近な話は
ショートショートの世界とは違う。
その昔読んでるはずの作品たちだが、天の巻同様、覚えていないので結構楽しめた。
このシリーズもあと一冊。
そういや「竹光侍」最新刊は4月だったような。楽しみ楽しみ。