オー!ファーザー --伊坂幸太郎

「やっと会えたね」。。。。。そんな誰かさんの台詞のようにつぶやきたくなるくらい久しぶりの
伊坂ワールドです。
ここのところの実験的伊坂作品から比べると懐かしい路線ですが、
戻ったのではなくてかつて新聞に連載されていた作品の遅れてやってきた単行本化、とのこと。

高校生の由紀夫には４人の父親がいる。なんじゃその設定。
でもこの４人が安心して味わえるキャラクターなのです。
４人の父親がそれぞれの個性を発揮しつつの愛情表現は伊坂作品らしく、不思議な私生活、
普通の高校生活に訪れる様々な事件、エピソードが最終的にキッチリ収束していく流れや
少々まわりくどいながらも、とぼけたリズミカルな会話が展開する様もまさしく伊坂ワールドでした。

「重力ピエロ」に漂っていた重さのかわりに「陽気なギャングが地球を回す」の軽さが加わり、
「チルドレン」の香り付けをしたような印象。
「ラッシュライフ」のキレが加わっていたら文句なしです。

ある意味「ゴールデンスランバー」のような大上段に構えたエンタメとは違って、
普通に書いた集大成なのかもしれません。
で、どっちが好きな集大成かと言うと、地味だけどこっちのほうが好き。
やはり第一期（本人曰く）のほうが好みってことですね。
好みと言えば４人の男を同居させてしまう女性って、どんな女性なのでしょうか。
相当な魅力の持ち主でしょうから、是非お会いしたいものです。

第二期の伊坂ワールドをいまだ掴みきれていませんが、そろそろこれぞ進化系！
と思わせてくれる作品を読みたいなと、改めて思いました。