吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2012年5月の読書リスト

「このうえドナ・サマーが死んだらちょっと辛いな」
マイケル・ジャクソンが突然旅立ち、少し落ち着いたときに相方にこんな言葉をこぼしたのだがこんなにも早く「その時」が来るとは思っていなかった。
彼女のアルバムを聴いていると、昔あったあれやこれやを思い出します。。。。

 

気を取り直して5月の読書リストと感想を少々。



2012/5/6読了
::彼女がその名を知らない鳥たち
沼田まほかる
 最後まで重苦しく、様々な嫌悪感に包まれながらも目が放せなかった。
 途中から展開は読めたが、ラストの切なさの前にそれは問題ではなかった。
 理解し難いがこんな愛もあるのかと思うと怖くもある。
 ようやく「ユリゴコロ」の順番が来そうなのでその前に読んでおきました。
 短期間に読むのはしんどい作家さんなんですが(苦笑)



2012/5/9読了
::安保条約の成立―吉田外交と天皇外交
豊下楢彦
 日本の外交能力欠如の原因を遡ると安保条約にまで行き着くのか。
 いくつかの資料を読み解いてはいるものの「推測」が含まれるので様々な角度からの検証が 必要だろうが、天皇外交の存在に言及しているあたりは興味深い。
 いまだ解決を見ない沖縄、基地問題は、この時点での皮肉な選択によるものなのだとしたらどのような解決が可能か、を考察するきっかけにもなるだろう。



2012/5/12読了
/ユリゴコロ
沼田まほかる
 まず作品中に登場する4冊の手記がとても読ませてくれる展開で目が離せなかった。
 著者の他作品に比べると、暗闇の中でも仄かな光を感じさせてくれる度合いが高かったと思う。
 ただ、著者の作品は読後の印象を素直に受け取っていいのか?と思ってしまうことが多いので、すっきりとしたラストも、まさか。。。と、つい色々なパターンで裏読みしてしまうのだ。



2012/5/19読了
/短くて恐ろしいフィルの時代
ジョージ・ソーンダーズ
 巻末の著者の言葉に「世界を過度に単純化し」とあるように、それによって登場人物の造形を含め読み手の想像力が試される気がした。
 確かに「ジェノサイドにまつわるおとぎ話」という言葉がピッタリな作品。



2012/5/20読了
::子供たちの午後
R.A.ラファティ
 初期短編集ということもあるのか、ラファティらしいホラ話というよりラファティらしい視点がストレートに出ていて笑えない作品が多いように感じた。ユーモアのオブラートが少ない分、ラファティの本質がわかりやすい作品群なのかも。巻末にある長編の解説が嬉しい。



2012/5/25読了
/罪悪
フェルディナント・フォン・シーラッハ
 前作同様、淡々とした文体だがショートショートに近い作品もある短編集。
 いくつかの作品は中編や長編に仕上げることもできそうなので作家のアイデアノートみたいだ。
 憂鬱な展開と結末が前作よりも増えたが、ガイ・リッチーの映画を彷彿とさせる「鍵」やラストの「秘密」は前作にない新味を感じた。
 残念ながら前作を上回ることはないが今後も読みたい作家であることは間違いない。



2012/5/30読了
/第七階層からの眺め
ケヴィン・ブロックマイヤー
 13の短編はSF、幻想、奇想だけにとどまらず思春期を描く作品など豊富なジャンルが詰まっている。
 なかでも「千羽のインコのざわめきで終わる物語」「静寂の年」「空中は小さな穴がいっぱい」は特に印象的。
 切なさや温かみだけではなく社会問題を織り込んだ物語りなどを含め、読後に何とも言えない気持ちにさせられる。

 

 巻末の解説に著者の選ぶ破滅テーマのSFベスト10が掲載されていて「トリフィドの日」や「猫のゆりかご」がランクインしていたが、著者の作品を読むと、なるほどね、
と思う雰囲気を持っている。



またまた7冊でした。