著者:ジュリア・フィリップス
ロシア東部のカムチャツカ半島で幼い姉妹が行方不明になるところから物語は始まる。
半島で暮らす登場人物たち、特に女性たちの様々な物語が淡々と綴られる。
人種差別や性差別、世代間の違いなどが半島の持つ閉塞感と相まって
時に息苦しくもある。
あまり知識のないカムチャツカ半島だが、細かい丁寧な描写のおかげで
雰囲気が伝わってくる。
ラストに向けて登場人物たちが徐々に絡まり始める様は
とてもデビュー作とは思えない緊張感だった。
まるでロシア人が書いているかのような雰囲気と内容だが、
アメリカ人女性による著書。
ロシアに興味を持ち、カムチャツカ半島で実際に暮らし、
ソ連及びロシアの変遷のなかで女性たちや先住民たちが
どのように扱われてきたかを女性目線でしっかりと
見据えているのが伝わってくる。
そしてこの作品が国と歴史を越えて突きつけている問題は、
今の時代誰しもが考えなくてはならないことなんだろう。