吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

スローカーブを、もう一球 --山際淳司

「江夏の21球」をご存知の方はある程度の年齢になっていると思いますが、
この本に入っています。
是非、今の若い人にも読んでほしい本です。

熱い戦いを語っているはずなのに、山際淳司の目を通すとそれだけで、その場面にある静謐さを感じます。
そのクールな文章はぐいぐいと読み手を引き寄せる強い引力を帯びています。

江夏と衣笠の会話にはグッときます。
読むたび、この21球の映像をもう一回見て、確かめたくなります。

表題の「スローカーブを、もう一球」も山際淳司らしい文章で気に入っています。
無名の高校球児を何の演出もなくそのまま書いているだけなのにとても印象に残っています。

それからこの題名も大好きです。
読点が入っているだけで内容がずばり表現されているのが素晴らしいと思っているのですが、変かな?


手軽に読めるので、数年おきにこの乾いた感じの良質な文章を読んでしまう。

新しい作品を読めないのが、とても残念です。