吉祥読本

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ダーティ・ワーク ::絲山秋子

ダーティ・ワークはローリングストーンズのアルバム名で、各章にはストーンズの曲名が冠されている。

 

worried about you
sympathy for the devil
moonlight mile
before they make me run
miss you
back to zero
beast of burden



最初の3篇は独立した短編なので、ああこれはストーンズの曲を題名に使っただけの
短編集なのかと思っていたらあれ?こいつは??とリンクが出てきて最終的には長編だったんだと
気付く。よくあるパターンかもしれないが巧い展開です。

 

「ちゃんとしないとなあ」と思いつつやる気が起きず、責任から逃れたい気持ちとか、
怠惰な自分が若い頃はよくあったなあと思う。今もないとは言えないが(笑)
そんなことに思いを巡らしてしまうのは適度な距離感を保ちつつ、寂しいくせにベタベタしないよう
最低限のプライドというかつまらない意地を張っている登場人物たちに共感してしまうからだろう。
彼らの不安定な気持ちが自分のことのように伝わってくるからだろう。
不器用で思いあがっていて、見透かされていて一人で生きていけるわけじゃない。
ラストの「ですます調」で語られる熊井の心情が新しい旅立ちを感じさせていい感じ。
この人の文章はしっくり来る。



ところで、途中出てくる麻子と貴子の「牛遊び」が気に入った。

 

牛遊びしない?
なんですか、それ。
形容詞プラス牛。
えー、楽しい牛とかですか。
そうそう、いかがわしい牛。
悩ましい牛。
おびただしい牛。
小汚い牛。
おどろおどしい牛。
輝かしい牛。
せちがらい牛。

 

今度運転中に眠くなったら使おうと思う。あんな牛やらこんな牛やら。。。
色々な牛の顔を想像すると、ニヤついてしまいます(笑)