吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

後藤さんのこと /円城塔

円城作品は二冊目。一言で言うとよくわからないが面白い。

 

楽しめたのが「後藤さんのこと」と「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」。
いずれも文体といい言葉の扱い方といい表記の仕方といい既存の小説に対するチャレンジするかのよう。
遡れば筒井康隆高橋源一郎という先駆者たちを彷彿させるが、そこに小気味よさを付け加えた感じ。

 

銀河帝国」や「後藤さん」の取扱い方に大笑いこそできないが時にツボに入り、忍び笑いをしてしまう。
わからなければ深く追求せずテンポよく読み続けると、自分に響いてくる言葉が浮き上がってくる。
あとは浮き上がった言葉を読む人が自由に再構築すればいいのだろう。

 

「考速」は字のごとく頭の中で考えることをテキストで流れのままに描いている。
まま、とは言えムダを感じない。小説と考えればムダだらけなのかもしれないが。
意図は非常によく伝わってきたけれど、思考のリアルテキスト化の困難さも感じる。

 

全体的に楽しめた反面、脳の滅多に使わない部分を刺激されたような感覚と疲れを感じた。
少ない脳ミソではあるがそれでも普段使っていない部分が結構あるなと痛感した次第。
実際、読後に手を触れると頭がヒートアップしていたような気がした。

 

真面目?な読者には受け入れ難い部分もあるかもしれないが、少しでも楽しめれば
それはそれでシメタ!と思うが勝ち、みたいな作家なのかも。
頭の良さを感じさせ、刺激的な作品たちだった。
こんな作品が大好きなことを再認識しました。



作品リスト
 「後藤さんのこと」 「さかしま」 「考速」
 「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire
 「ガベージコレクション」 「墓標天球」の6篇。