吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

侍女の物語

著者:マーガレット・アトウッド
翻訳:斎藤英治
出版社:早川書房

 

ギレアデ共和国で侍女として働く女性オブフレッドの物語。
なぜこんな状況になっているのだろう?
いつの時代想定なのだろう?
と、疑問を持ちながら読み続けるが、理由がなかなかわからず、もどかしい。

共和国の支配者の一人である司令官の家庭で選ばれし彼女に求められるのは子供を産むこと。
子供を産めない、反体制活動をする者たちは情け容赦なく厳しい環境に送り込まれてしまう。
状況はわかるのだが、女性なら理解できるだろう気持ちがどうにもしっくりこないせいか、静かに淡々と語られるためか、退屈だなあとすら思って読んでいた。

かつて夫も子供いた、友達が消えたなど、彼女の周辺で色々なことが起きてきた事がわかる。
尊厳を踏みにじる儀式。
子供を産むことだけが求められている存在。。。

淡々とした進行が途轍もない抑圧感に繋がってくることに気づく。
支配者層の考え方が明確に分かってくると、どんどん嫌な気分になってくる。

人格を否定され、女性に女性を支配させるシステム、常に監視される日々。


ディストピア小説として常に名前が出てくる作品だが、
この作品の世界観は最後に一気に理解できる仕組みとなっている。
なぜ淡々としていたのかがわかると、突然彼女たちの鬱屈とした気持ちが
リアルさを伴って襲ってくるようだ。

こんなことが起き得ないとは断言できないな、と思うとやるせない。

オブフレッドから逃げることとオブフレッドになること、どちらが幸福なのか。

いやどちらも幸福ではないからディストピアなんだな。

尊厳や自由を守るということは案外難しい。

まずはよく考えて流されないようにしないとね。

気付いた時にはもう遅いかもしれない。


2010/3/14読了