超能力を持った兄弟の話。
「魔王」が兄、「呼吸」が5年後の弟を主人公に、2編がセットで収められています。
読んでから時間が経っているのですが、当時個人的に感じていた危機感とシンクロしました。
あとがきには「ファシズムや憲法が出てきますが、それらはテーマではありません」と書いてある。
伊坂幸太郎自身が私と同じ感覚だったかはわかりませんが、
同様な危機感をきっかけに本書を執筆したような気がします。(あくまで個人的な憶測ですが)
ちなみに個人的な危機感は未だに消えていない・・・
確かに政治的なメッセージはないと思います。少なくとも主題ではないでしょう。
簡単に言ってしまえば「超能力者と政治家(ファシスト)の対決」ですし。
「考えろ」という言葉が頻繁に出てきます。
今の日本で加速している閉塞感は、とてつもない負のパワーを溜め込んでいるように思います。
こんなときにとても魅力的な政治家(ファシスト)が出てきたときに、
そのパワーが一気に結集してしまうのではないか?
そしてそのパワーが各自でコントロールしている意識的なものではなく、
ただの無責任な群集心理で動いたとしたら・・・・・・
怖い
それまでの伊坂幸太郎とは違うタイプの作品なので戸惑いました。
村上龍の「愛と幻想のファシズム」のような、ある意味ハードな部分はありません。
むしろかなり淡々と物語りは進んでいきます。
淡々とし過ぎていて物足りなさすら感じました。
でもそのほうがかえってリアルなのかも。
「魔王」の正体は何か?
多分読む人によって解釈が違うと思います。視点を変えると「魔王」の解釈が変わる気がするし、
「魔王」の解釈すら関係ないのかもしれない。
「呼吸」の静けさを、単純に爽やかないつもの伊坂幸太郎作品として捉えていいのだろうか、
というのもある。
この作品は二度読みするといいのかもしれませんね。
一度目は肩透かしをくらった感じがして二度読みしちゃいました。
読むたびに面白くなるタイプというか、違う面白さを発見できる本というか。
こんな伊坂幸太郎もありなのかもしれません。
とりあえず自分の中での最終評価は先延ばしにして、三度目をいつか読もうと思っています。
「考えろ」ってこと?
ちょっと悔しいのが、マクガイバーって見てないから知らないんだよなあ・・・・