吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

吉原手引草 --松井今朝子

「BOOK」データベースより引用
廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか?失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作。


初読の作家さんです。本作品は読み慣れない言葉や漢字が多く、読むのに時間がかかりました。
何日にも渡って読んだのでせっかく読めてた漢字が次の日には思い出せなかったり・・・(汗)

 

「わちき」「ありんす」などの言葉遣いは知っていてもそれを文章で読むとなると意外と手間取ります。
吉原という言葉は子供の頃からよく聞きましたが、基本的にはよく知りません。
本書を読むと吉原という世界がどのように構成されているか、どんな人たちが生活しているのかなど自然に知る事が出来ます。(既に忘れはじめていますが、これは別の話し・・・)


吉原でもトップクラスの売れっ子の花魁、葛城がある日突然姿を消す。
事件の真相を訊いて廻る男に答える関係者たちの語りで構成されています。
最近読んだ本で言うと「ユージニア」みたいな構成です。

 

まず、花魁の周りには様々な役割を担う人たちが存在するものだなあと驚きます。新造、禿、遣手、床廻し、幇間、指切り屋、女衒・・・・
核心になかなか触れず、ゆっくりと外堀を埋めるように語られることにより、
ぼんやりと葛城の人となりが浮き上がります。

 

金持ちの社交場である当時の吉原は、現代風に言えば銀座の会員制高級クラブみたいなものでしょうか。
ただの金持ちの道楽世界といえばそれきりですが、多くの人間が遊び場を制度化、形式化することで付加価値を高め、サービス提供者は金持ちをおだて気持ちよくさせ、金持ちもそれをわかっていながら「粋」という言葉で金を使い、中間マージンを受け取りながら多くの人間の生活が成り立っている図は現代社会そのままじゃないかと思う。ちょっと強引か(笑)
でも花魁一人身請けするには一千両はかかる、となるとバカにはできない経済効果だと思います。一千両が今の貨幣価値でいくらになるのかは知りませんが、かなりの額にはなるでしょうね。


時代ミステリーの傑作、と銘打ってますがミステリー好きな人が読むと全然物足りないでしょう。それでも各人の心意気や、華やかな世界の中に隠された生い立ちなどにはホロリとさせられました。
少し毛色の変わった作品ではありますが、思っていたよりは楽しめた作品でした。