吉祥読本

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黒い家 --貴志祐介

第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。
ようやく、貴志さんでビューです。
主人公の若槻は保険金の支払い査定という業務を行っているのだが、作者自身、保険会社に勤めていただけあって内情がかなり詳細に書き込まれています。
ストーリーは若槻の日常業務を綴りながら進行し、ある日、一本の電話がかかってくることで「何か」が始まる気配がする。

 

・・・・・「保険金いうのは、自殺した時でも出ますんか?」

 

その後、客に名指しで呼び出された若槻は、そこで子供の首吊り死体を目撃する。不審に思う若槻は父親が怪しいと思い調査を開始するのだが・・・
ホラー大賞だが、霊的なものではない。
が、しかし、怖い。
人間がやはり一番怖い。
追い詰められると人はここまでできるものなのか。

 

子供の母親は確かにモンスター的で怖い。
でも一番怖かったのは父親の静けさ。
追い詰められているにもかかわらず攻撃的ではなく、静かにたたずむ。
その無言で存在し続けるだけで人を追い詰める恐怖。
目を合わせたくない・・・

 

このジワジワ追い詰められる感じが気持ち悪い。
主人公と共に一緒に追い詰められる感じがして嫌だ。

 

主人公の行動や周辺の人物象に関してはちょっと疑問に感じるところがいくつかあったし、最後は少しドタバタした感じも受けたが全体的な構成は素晴らしい。
これが初期作品とは思えないほどの完成度だと思う。
そして何より、リアルにこんなことが起きそうなところが痛々しくて恐ろしいのだ。

 

金のためなら何でもできるか。生きるためなら何でもできるか。
いや、できない。ここまでのことは絶対できない!!


受賞に納得できるホラー大賞作品でした。