吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ぼくと、ぼくらの夏 --樋口有介

高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らすぼくは、友達の麻子と調べに
乗り出したが…。開高健から「風俗描写が、とくにその “かるみ”が、しなやかで、的確であり、
抜群の出来である」と絶賛され、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した、青春ミステリーの
歴史的名作。 (「BOOK」データベースより引用)


評判が良かったような気がしたので積んであったのですが、暖かくなってきたのでそろそろかなあと。

1988年の作品だけあって、どうしても古さが感じられます。
その点では「アルキメデスは手を汚さない」(小峰元)の再読時や「青の炎」(貴志祐介)などと同じ
印象です。ですから読む時期が十代だったら楽しめたのかもしれません。
アルキメデス~」だって中学生の頃は面白かったわけですし。。。

最初から最後まで主人公の高校生、春一の子供らしくない言い回しとかが気になります。
女子高校生などの会話や態度にも違和感を感じますが、これは世代の違いもあるのでしょうか。

時代的には喫煙率の高さはわかるのですが突然あたりまえのようにタバコを吸うシーンに
何か意味があったのでしょうか。まじめな高校生に見せかけて実は不良、みたいなことを
表現したいということであればお粗末ではないかと。
警官である父親の目の前でタバコを吸うシーンで、父親が一言も注意しないのも不自然。
この親子の関係を考慮しても「お前、せめて俺の前で吸わないくらいの配慮はしろよ」の
一言があるべきでは?

ミステリーとしての展開は単純なので、この作品の評価の高さは恋愛部分にあるのでしょう。
という事でその手の小説が苦手な自分には、例え発売当時に読んでも相性が悪い一冊だった
可能性があります。


個人的なことですがこの作品のかなりの部分が、子供の頃から現在までの自分の生活圏内で展開しています。
むしろその描写のほうが楽しめました。あの道の先にそんな建物は無かったよなあ、とか
もしかしてここは今自分が住んでるところでは?などと思えるくらい際どい近さに驚きました。
知っている場所だらけだと具体的な映像として見えてくるので、その点は楽しめました。
十代でこの作品と出会っていたら、それだけで評価が高くなったかもしれません。