吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

海底二万里(上・下) --ジュール・ヴェルヌ

約二年程前、岩波文庫が新訳版を出版した際に入手していたものだったのですが、ようやく機会が到来しました。子供の頃に読んだきりで再読したいなあって思っていたもので。

 

だいぶ忘れていましたが、子供の頃に植えつけられたイメージはヴェルヌの力量の凄さから由来したものだったんだなあと気付かされました。
アロナックス教授たち3人が、潜水艦ノーチラス号を操るネモ船長と出会い、世界中の海を渡り歩く冒険ストーリーですが子供心にもワクワクした記憶はあります。
では何にワクワクしていたかというと、ヴェルヌの未知の海に生きる魚や自然に関する膨大かつ詳細な知識が海洋学者が書いたかのように豊富に、作品全体に散りばめられているからでしょう。
さらに潜水艦の構造、動力の仕組みなどの技術的な知識もかなりしっかりと記述されています。(ただドイルもそうなのですが、本当に科学的に正確なものか自分には判断できないのですが。。。笑)
書かれた時代を考えるとすごい創造力&想像力の持ち主だったことが改めてわかり、
ヴェルヌの持つ確かな知識が、今読んでも特に違和感を感じさせない要因であり、
子供心をぐっと掴んだに違いありません。
基礎知識を持った上で想像力を働かせるヴェルヌが、質の高い多くの作家を刺激し、
影響を与えたことは間違いないでしょう。
単なるアイディアだけのSFとは違い、長年読み続けられるには理由があるんですね~。

 

大人になって気がつく事は他にもあります。
例えばネモ船長の行動、目的に関しては子供の頃はあまり気にしませんでしたが、
ネモ船長に漂う「影の部分」が作品全体を覆っている感じがとても気になりました。
作品の締め方が全く記憶に残っていなかったのですが、子供には理解できなかったことでしょう。(個人差?)
また、当時普通に存在していた階級意識、人種意識なども読み取れます。

 

ノーチラス号で死者が出たとき、サンゴ礁に覆われた海底の墓場に埋葬するシーンがあります。子供の頃は興味が無かったシーンですが、今回は、自分も死んだらここに埋めて欲しいなあと思いました。
歳をとると作品の目の付け所が変わる典型例かもしれません(笑)

 

ああ、それと助手のコンセーユの忠実さと生物の分類能力には驚かされます。
凄すぎて彼の語る情報は全く頭に入りませんが(笑)、ストーリーに影響が無いので良しとしましょう。

 

そうそう、潜水艦の中にある豪華な図書室は羨ましいですねえ。


大きな作品系譜の原点を再認識でき、収穫の多い再読でした。
深海祭りには、やはりはずせない作品ですね。

マイケルが亡くなり、ヤフーのミスが続き予定が遅れましたが、祭りはまだ続きます。



◆深海祭り(笑)リスト◆