吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

戯史三國志 我が槍は覇道の翼 /吉川永青

我が糸は誰を操る」に続いて第二弾を読みました。
第一弾は陳宮が主役だったが、今回は呉の孫家三代に仕えた武将、程普にフォーカスしている。

 

役人出身でありながら流浪の末、黄巾族となっていた程普は、孫堅と出会い闘う。
互いに戦上手なれど、結局は孫堅の軍門に降る。
この二人の出会いシーンから早速心を奪われ、もう夢中になって読んでしまった。

 

勇猛果敢さと茶目っ気を持ち合わせる孫堅と、補佐する程普、黄蓋韓当朱治らとの関係が非常に良好で、これから伸びていく小さい組織の活気と意気込みが読んでいて楽しかった。
特に年下の孫堅を同年代の黄蓋と共に見守る程普の姿に男気を感じさせる。
また、全編を通して描かれる黄蓋との熱く信頼感溢れる友情も本書の見所だ。

 

志半ばで世を去る孫堅に落胆する姿、跡を継ぐ孫策を改めて盛り立てる姿は涙ぐましい。
また、若い周瑜の登場でその能力に嫉妬してみたり、歯軋りしている姿に人間臭さや武骨な男の可愛らしさが微笑ましくもある。それにしてもよく泣くこと。

 

後半は孫堅に続き、またしても早逝してしまう孫策の弟、孫権が三代目となり、
初代から仕える武将たちの更なる心模様が描かれる。

 

程普と周瑜との確執は通常の組織にも起こり得ることで、どちらの気持ちもわかる。
古参が長年支えてきた自負と、若い有能な人材は時代の流れによって考え方が当然異なる。
この作家さんは今でも会社員らしいので、自らの経験をうまく取り入れているのか
機微をうまく捉えているようだ。
最後の赤壁の戦いもさらりと描いているので、この作品のメインは戦争よりも
魅力的な人間関係を描くことにあるようだ。これは第一弾とも共通している。

 

呂布との戦いの様子、陳宮との会見など、第一弾で出てきた人物たちを程普たちの目線で読ませてくれるのも嬉しいサービスだった。

 

第一弾に続きどの人物も魅力的でほとんどの登場人物に好感をもってしまう作品だが、
第三弾はどんな魅力的人物たちにフォーカスしてくれるのか、非常に楽しみ。
「蜀」に属する人物だろうと予測しているが、渋い人物にスポットを当てているので予測は難しい。
きっと「そう来たか!」と驚くことになるだろうが、それも含めて楽しみに待ちたい。