吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2015年12月の読書リスト

最後まで慌ただしくて。滑り込みだったが面白い作品で締めることができました。



 2015/12/4読了
 /デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
 デービッド・アトキンソン
 日本人と外国人のサービスに関する考え方の相違が良くわかる。
 移民を受け入れにくい国民性であることは指摘されるまでもないが
 「短期移民」という考え方は日本人にとって受け入れやすい落としどころかも。
 ドラッグストアで買い物をしようにも爆買いの観光客で辟易することが多いため
 観光客はこれ以上増えてほしくないという思いは正直あるが、きちんと戦略をたて、
 外国人が必要とするサービスを提供すればまだまだ日本にも可能性があるのなら
 気持ちを切り替えることも大切なんだな。



 2015/12/8読了
 /地球の履歴書
 大河内直彦
 地球に関わるトピックスを理系ではなくても理解できる文章がスッと入ってくる。
 そしていちいち面白い。
 海底のソナーによる探索で浮かび上がる風景とかイメージが湧くたびワクワクする。
 はじめて知る「塩」や「氷」などを語りながら地球の思わぬ仕組みが知識欲を
 くすぐります。
 サラダは聞いたことがあるけど、ソルジャーやサラリーの語源が塩にあったなんて
 知らなかった。
 フランケンシュタインやドラキュラの物語が生まれた理由も大噴火による環境変化が
 関係したなんて思わぬ視点が楽しい。
 とても良い本に出会うことができました。



 2015/12/13読了
 /ニューギニア水平垂直航海記
 峠恵子
 現在「冒険歌手」というタイトルで復刊しているが、図書館で旧版を借りた。
 順風満帆な自分にこれでいいのか?と思っていた時に偶然見つけた
 ニューギニア探検隊員募集に応募、参加してしまう行動力にも驚くが、
 破天荒としか言えない隊員たちに恐れ入る。
 更にケイコ隊員のあっけらかんとした文章でさらりと読み飛ばしてしまいそうだが、
 そこで語られる隊長やら大学生のユースケ隊員やら(角幡唯介氏じゃないか!)
 ましてや本人の行動力というか生命力というか、とても太刀打ちできるものでは
 ないが、元気をもらった気分。
 新版もいずれ読もう。



 2015/12/17読了
 ::関羽を斬った男
 吉川永青
 三国志の中でも有名人の周辺にスポットを当てた短編集。
 女たちの三国志?と思うくらい女性にもスポットが当たっていた。
 表題作「関羽を斬った男」はむしろユーモア漂う男達の悲哀と達観に同情を
 禁じ得ない。
 「臭う顔」はそれそれの立場の人物描写や心の動きを面白く読めた。
 死せる孔明司馬懿どころか後継者たちをも動かしていたわけだ。
 結局、周辺人物を描くことで主要人物たちの際立ったキャラをより浮き彫りに
 している気がする。



 2015/12/20読了
 ::決戦!三國志
 田中芳樹/東郷隆/天野純希/吉川永青/木下昌輝
 「決戦!」シリーズに三国志が登場。
 許攸に対して出した曹操の答え、周瑜の秘めた野望、法正の恩と怨、
 倭人である操倶木の不思議な力、劉禅に対する司馬昭の心情など、どの作品も
 楽しめた。
 自分が思っていた人物像と違う面を提示してくれると今後も三国志の楽しみ方が
 違ってくるだろう。
 魅力的な人物が多いので、三国志だけでシリーズ化できそう。



 2015/12/26読了
 /イスラムの読み方
 山本七平/加瀬英明
 復刻本。イスラム社会が氏族で繋がった世界だったとは知らなかった。
 複雑なわけだ。
 本書で語られた日本とイスラム社会の国家観の違いはいまだに埋まることは無い。
 対話形式で分かり易い比喩が結構あるので部分部分で理解した気にさせられるが、
 読み終わってみると、結局は高い壁があることだけが分かった。



 2015/12/31読了
 /佐治敬三開高健 最強のふたり
 北康利
 若い頃に映像の仕事を目指した理由はCMを見るために番組を見る、
 そんなCMを作ってみたいという動機からだった。
 今となってはドクターストップで全く違う業界に転身したが、
 本作を読んでいるとあの頃の青臭い情熱が沸々と湧いてくる感じにワクワクした。
 佐治敬三開高健の立場の枠を超えた友情と彼らが苦悩しながら作り出した
 傑作作品たちに、ただただ敬意を捧げたい。



7冊読了。