著者:秋場大輔
出版社:文藝春秋
まるで池井戸潤の作品を読んでいるような錯覚を覚えるノンフィクションだった。
LIXILで起きていたことは日経関連の記事で概要を読んでいたくらいで
結局内部抗争でしょ?くらいの印象だったが、こんな熱い闘いが展開されていたとは。
LIXILは大雑把に言うとトステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア、
サンウエーブ工業が合併してできた会社。
そしてプロの経営者として、モノタロウを創業した瀬戸欣哉氏をCEOに迎え入れる。
その瀬戸欣哉氏がCEOを突然解任され、わずか3%の株式を握っているに過ぎない
創業家出身の潮田洋一郎氏と、ほぼ勝ち目のない闘いを繰り広げる。
罠にかけられ、解任される経緯がテンポよく描かれ、
奮闘する瀬戸氏に次々と援軍が現れる。
真実を知ってしまった以上は黙って見過ごせない、と動き始める人たちが熱い。
小説ではなく、登場人物全てが実在するノンフィクションなのだから
無責任な読者としては面白い。
解任した側が有利なうえ、次々と対抗処置を繰り出す潮田氏に何度も追い詰められる
瀬戸氏の粘りと精神力には目を見張るものがある。
できることは何でもする、諦めない瀬戸氏の姿には大いに勇気づけられる。
基本的に瀬戸氏側から描かれているため、一方的に潮田氏を悪役に見立てるのは
問題があるかもしれないが、姑息な手段で瀬戸氏を追い詰めた方法は決して
褒められたものではない。
大企業におけるガバナンスが効かないとどうなるのか、どうすれば良いのか
個人的にはあまり関係のない話しだが、とても勉強になった。
コーポレートガバナンスとは何ぞや。
そう思ったら非常に分かり易い教科書としてオススメ。