数あるノンフィクションん中でもトップクラスで好きな作品です。
読んでからずいぶんたちますが、色々と影響を受けたなあと思います。
映画「ゴッドファーザー」のモデルとされるシチリア・マフィアであり、
ニューヨークの五大ファミリーのひとつ、ボナンノ一家の興亡を描いている。
単行本なのだが、2段組で文字の大きさは文庫本並みなので、読み応えは十分だ。
映画「ゴッドファーザー」の面白さはに関しては、ご存知な方のほうが多いでしょうから
スルーしますが、長い映画なわりにそれを感じさせない、とっても面白い作品でした。
ただ、映画では長い分、家族愛にも触れてはいるがやはり血で血を洗う抗争が目をひいてしまう。
マフィアとはいえ毎日ドンパチやっているわけではない。
あたりまえだけど普通の人間でもあるわけだ。
そんなマフィアたちの日常と苦悩が本書を通して静かに伝わってくる。
ゲイ・タリーズはニュー・ジャーナリズムの代表選手みたいなものだけあって、
ボナンノ一家との7年に渡る家族ぐるみの付き合いを通して、お互い信頼を育みながら取材を進める。
深い付き合いがなければこれだけの作品は生まれなかっただろう。
ゲイ・タリーズの彼らへの愛情、友情もよく伝わってくる。
読み進めるうちにこのマフィアたちに対して徐々に親近感が涌いてくる。
ボナンノの晩年には同情すら覚えてしまう。
ゲイ・タリーズの気持ちが読者をシンクロさせる文章を書かせていることは間違いない。
ニューヨーク・タイムズの記者あがりのノンフィクション作家だから
実力は当然あるといえばそれまでだが
マフィアの家族たちが他の家族に言いにくいことをタリーズを通して
伝えるようにまでなっていた、というのは並大抵のことではない。
タリーズがどれくらいの覚悟で取材に望んでいたかはそれだけでも想像できる。
マフィアの歴史の面白さもさることながら、タリーズは丁寧に、冷静に家族愛やアメリカ社会の
暗部をも浮かび上がらせていて、色々な楽しみ方のできる稀有な作品だ。
残念ながら他の作品は読んでいない。
昔良く読んでいた雑誌、エスクワイア日本語版では何らかの文章を目にしているかもしれないけど、
記憶がない。。。。
本屋でちょっと探したぐらいでは見かけないのですが、数少ない他の作品を見つけ次第
読みたいと思います。