吉祥読本

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半眼訥訥 --高村薫

初めての高村薫作品です。とはいっても最初に読んだのが小説ではないのが申し訳ない感じです。
名前は知っていましたが、女性だというのも知りませんでした・・・

 

本書を雑文集という聞き慣れない言葉で表記している作者。
読み終わるとなるほど、「雑文集」という表現や「半眼訥訥」という題名も筆者の姿勢が
よく出ているのですね。
謙虚でいながら、只者ではないということが読んでいるうちに伝わって来ました(笑)

 

「女性だから」と「男性だから」という性差を必要以上に意識するのはあまり好きではないのですが
女性っぽい視点はあるものの、硬質の文章は女性を感じさせない。
全部とは言いませんが共感することが多かったので、驚きました。

 

まくし立てられるのではなく、じっくりと理路整然と話しかけられているような感じでしょうか。
仕事で敵にまわすときっと厄介です(笑)

 

文章から、普段から色々なことを深く考えている人なんだということが伝わってきます。
私が同じ言葉を使ってみても、重みが違う。。。。当たり前ですが(泣)

 

私が何となく感じている世の中への疑問や不満などが、短い言葉で的確に表現されているため
「ああ、そうそう、そういうことだよね」と合点のいくことがかなりありました。
ようやくスッキリした言葉がみつかった感じです。
勉強になるなあ。。。
どう逆立ちしても真似はできません・・・



本書を紹介して頂いた fairwaywindさん も取り上げていますが子供を見る目は大いに参考になります。

 

引用しますが、

 

「子供はたぶん、食事を与えられるだけで安心する。拙作の中で、六歳のある主人公は、
貧しいながら母親が毎日作ってくれるご飯を食べ、元気に外で遊ぶ毎日だったが、
ある日母親がご飯を作らなかった、ただそのことで生活の崩壊を予感する。」

 

この一文には唸った。

 

頭脳明晰で自分の考えを的確に伝えることができる人って、うらやましいです。
こんなに気持ちよく代弁してくれる味方がいてくれると、心強いんですけどね(笑)。



読んでいる最中は背筋がつい伸びてしまうような感覚なのですが、実は直接お話しをすると
面白い人なんじゃないかと興味を持ちました。
(勝手に想像しているだけですけど。)
冗談を真顔で言いそうな感じがします。
我ながらひねくれているかもしれませんが、そんなタイプの人であれば嫌いではありません(笑)
もし違うなら、・・・・いつも説教されてしまうかもしれません(笑)



ミステリー作家なんですよね~
批評家っぽい雰囲気が漂っていてイメージが涌かないのですが、
どんな小説を書くのか読んでみたくなりました。
また、「小説の言葉」という講演で話した記録をまとめたものが最後に書かれていますが、
作家としてどのように小説と取り組んでいるのか、作品作りをしている時に考えていることなどは、
とても興味深いものでした。
本来ならば先に作品を読んでからこの雑文集を読むのが正解なのかもしれませんが(笑)

 

気楽に読める作品は書いていないような気がしますが、心理描写がうまそうなので
読み応えある作品が多いんでしょうね、きっと。

 

興味津々です。いずれ読みたいので、何作かリストに加えました。