吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ワセダ三畳青春記 --高野秀行

酒飲み書店員大賞?第一回受賞作!!なんと私をそそる賞なんでしょうか(笑)初めて知りました!



「BOOK」データベースより引用

 

三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、
アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。
一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。
金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、
能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。



たくとママさん のご紹介で読んだ本です。高野秀行作品は初めてです。
本書の表紙の写真を見たとき、あれ?と思っていたのですが、手にとって見て思い出しました。
出版時に書店で平積みになっていたんだと思いますが、見覚えがあったんです。
あの時買っておけば良かったと今は後悔しています(笑)

 

最初からあっという間に不思議ワールドに引き込まれました。
思わずクスッとしてしまうような出来事が随所に出てきます。面白い!!そして滅茶苦茶だあ!!
こんな世界ちょっとだけのぞいてみたい。

 

奇人変人の面々(失礼!)の個性は一人だけでもお腹いっぱいなのに、
大勢集まると化学反応を起こすのでしょうか。
無駄な戦い、無駄な結束、無駄な挑戦・・・傍目でみるとそんなふうにしか受け取られないだろう事に
なぜかみんな真剣に向き合っているのだ。

 

そしてそれらの魑魅魍魎たち(またまた失礼!)をまとめて受け入れている大家さんの
おばちゃんの存在は大げさかもしれないが偉大だと思う。太っ腹にも程がある。
是非お知り合いになりたいものだ。

 

とにかく楽しい日々を過ごす彼らをそこに済む住人でもある高野氏が生き生きと、
そして愛おしさをもって書いている事が良くわかります。

 

そして、解説にもあるように5、6章がこの本で高野氏が一番書きたかったことなのでしょう。
前半では、普通経験できない世界が描かれ、笑わせておきながら、
一転して5章、6章では成長し、決断し、旅立つ姿、
そしてその経緯をあまりにも素直な文章で書き綴ります。
これには私も素直にジ~ンときました。切なくなりました。



ここまでのことは無いまでも、それなりにムチャクチャな(笑)自分の学生時代に
思いを馳せてしまいました。
偶然なのか必然なのか、ある時期ビックリするくらい波長の合う、
学校や年齢を超えたグループというものが私にもありました。
高校一年生の夏から始めたバイト先のグループです。
一番年下だった私がときに先頭を切ってムードを盛り上げることもあれば、
暴走している(笑)個性豊かな人たちの面倒を見なければいけないこともありました。
(そのほうが多かったかも。。。笑)
足掛け約5年の間にメンバーが少しづつ入れ替わり、そして社会に旅立っていくことで
メンバーが徐々に減っていく。
一番年下だった自分も社会に出る時、高野氏と同じような感情を持っていたような気もします。



楽しくて無責任な、ぬるま湯いっぱいの湯船から出るのは、誰にとっても一度は通過する
切ない経験なんだろうと思います。
そしてそれはとても大事な思い出というか財産になる瞬間でもあるのではないでしょうか。



つい、伊坂幸太郎「砂漠」 を思い出してしまいました・・・



とても面白かったので、すっかり高野氏のファンになってしまいました(笑)。
他の本も読もうと思っています。




ところで、酒飲み書店員の皆様、書店員じゃないと仲間には入れてもらえませんかねえ?。。。。笑