吉祥読本

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反逆(上、下) --遠藤周作

このたび「のぼうの城」を読み終わったので、自分の中で読みながら浮かんだ、
過去に読んだ本を2冊(共に上下巻なので4冊なのですが・・)一緒に感想を書いてしまいました。
ひとつめが遠藤周作の「反逆」、もうひとつが堺屋太一の「巨いなる企て」です。
時代小説三本セットということで、まずは「反逆から」です。
かつて、読売新聞に連載されていたようです。



出版社/著者からの内容紹介
1度でもいい。上さまの……あの顔に……怯えの影を見たい
――己れの力に寸分の疑いをもたぬ信長の自信、
神をも畏れぬ信長への憎しみ、恐れ、コンプレックス、嫉妬、
そして強い執着……村重、光秀、秀吉の心に揺らめく反逆の光を、克明に追う。
強き者に翻弄される弱き者たちの論理と心理を描ききった歴史大作。



織田信長が権勢を誇っていた頃の話です。
摂津の小豪族でしかない荒木村重が生き延びるために信長傘下にくだります。
人を信用しない冷酷な男、信長に仕える高山右近荒木村重、そして秀吉や光秀は
その強烈なキャラクターの持ち主に翻弄されまくりです。

 

秀吉の狡猾さ、右近のキリスト教徒としての苦しみ、村重へ向けられた疑惑と
反逆への道へと追い詰められていく過程、そして光秀の受けた屈辱と謀反。
各人の葛藤がとてもわかりやすく書かれています。
上下巻で読み応えがあるのですが、結構スラスラ読めてしまうくらい引き込まれました。
15年くらい前に読んだもので細かいことは覚えていませんが・・・

 

荒木村重とのことはそれまで知りませんでしたが、この男をや光秀を通して描かれる織田信長像は
絶対上司にしたくない男№1であることは間違いありません。
どんなに頑張っても納得いかない理由であっさりと突き落とされるなんて、嫌だな。
歴史上の人物だと思うから好感度は高いんですけど。。。。

 

この話しは本能寺で信長が死に、秀吉が柴田勝家を倒して事実上の天下人となったところで終わります。
歴史どおりに描かれているのですが、光秀が謀反を起こす過程を追っていくと、
ああ、謀反起こしたくなるよね、なんて思います。
実際はどうなのかは今でも諸説ありますが、この本を読んだ時は納得したものです。



この本で最後に笑ったのは秀吉ですが、その秀吉が「のぼうの城」では反逆される立場になり、
「歴史は繰り返す」のだなあ、としみじみ思いました。

 

また、荒木村重は生き延びて秀吉の御伽衆になり、茶人として生きたと終わりに付け加えられています。
謀反を起こした事によって生き延びる事が出来たのかもしれない、と思うとどちらがよかったのかなあ、
なんて思います。
運命のいたずらってやつなんでしょうか。



さすが遠藤周作。うまいです。