吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

岬一郎の抵抗(1~3) --半村良

SFは「そんなに読んでいない」と、以前どこかで書いた気がするのですが、
なぜか細々と感想を書き綴っているのは、SFが好きなのか、好きだったのか・・・
未だにわかりませんので熱狂的なSFファンではないと思う、とだけ、つぶやいておく事にします。
半村良は「伝奇」もの作品が多いので、そっち系を何となく好まない私は
5~6作品程度しか読んでいません。
ただ、独特の雰囲気は今でも記憶に残っています。

恩田陸の紀行文「恐怖の報酬」を読んでいる途中ですが、
この作品に軽く触れていたので思い出しました(笑)


半村さんはSF作家なのですが、人情小説「雨やどり」で直木賞とってるんですよね。
若いころに読んだのですが、地味ながら独特の雰囲気で結構好きな作品でした。

「岬一郎の抵抗」はそんな人情テイストが入っているSFとでも言うのでしょうか。
ちなみに本作は日本SF大賞を受賞しています。


下町に暮らす平凡な男、岬一郎は近所で起きる公害問題に関わるうちに
不思議な力を発揮し始める。

その超能力はどんどん増大し、彼は善良な人々を助けることに利用し続けるが
あまりの能力の強さに国家が彼を排除しようと動き出す。


こんな感じのストーリーで、人情豊かな下町とSFとの意外な組み合わせが楽しめる。

以前感想を書いた 「人間以上」 もそうでしたが、超能力者(新人類)と従来の人間との間に生じる摩擦、
悲しみなどはいつの時代であっても人間の興味を駆り立てるテーマなのでしょうか。

この超能力者を救世主に置き換えれば、キリストの運命(救世主の排除)とシンクロする
岬一郎の苦悩、絶望は大きい。


私が持っている本は3巻セットなのですが、あっけなく読みきれた作品でした。
もっと短くまとめる事は可能だったとは思いますが、テーマの重さを考えれば
それだけ書き込みたかったのでしょうね。



ああ、「石の血脈」を読みたいと思っていたのにそのまま今日に至ってしまった事に
書きながら気付きました(苦笑)。

忘れないうちに古本屋さんで探しましょうかねえ。