吉祥読本

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1985年の奇跡 --五十嵐貴久

五十嵐貴久作品の初読みです。気になっていた作者さんで、
しばらく積んであったのですがようやくです。
他の作品の題材は、調べる度に、「この人の書く分野はなんだろう」って思っていました。
で、題名からして予測のつく作品から読もうかなと思ったわけですが思ったとおりでした(笑)

 

1985年といえば既に私は社会人になっていたのでちょっと時代が違うのですが、
この年の前後は個人的に色々あってよく覚えています。
そんな曲もあったなあとか、ちょっとした当時の「アイテム」がチラチラでてきます。
阪神の奇跡もこの年だったんですね。

 

そんなアイテムのひとつとしておニャン子クラブも出てくるのですが、
確かにおニャン子が世の中を席巻してましたねえ。
でもおニャン子には、本作にでてくる高校生のような思い入れは当然(笑)ありません。
どのメンバーが好きかでもめるなんて、ありませんでした。社会人ですしね。大人ですから。。。

 

ですが、彼らの行動は自分の高校生時代と大差ないことだけはわかります。



練習嫌いの弱小野球部が、凄い選手の加入によって甲子園を目指すっていう
いわゆるベタな展開なのですが、途中その選手が思わぬ展開で挫折します。
そこからしばらく「彼ら」の苦悩が続くわけですが、正直なことを言うと、
この展開は何で?ってかんじで納得いきませんでした。
かと言って雰囲気が暗くなるわけではないんですけどね。
そのへんはカラッとしているのですがもっとストレートど真ん中な作品であって欲しかったし、
その挫折から復活試合までがやけに冗長に感じました。
せめてあの展開でもいいからもう少し短くなるとテンポの良さがでてきたのでは?
(偉そうなこと言ってしまいました。。。)

 

ただ、この展開だったからこそあのクライマックスも効果があるんだろうなあ、きっと。

 

それから野球部員のひとりひとりのキャラクターがもう少し強くてもよかったかな。
読み終えたばかりなのに印象がいまひとつ残らないんですよねえ。
群像劇みたいな作品って「こいつ、オレみたいだな」なんて感情移入できると
面白さも変わってくると思うのですが、折角いい台詞があっても響かないのが残念。

 

そのわりにサブキャラの高野聖子や金沢真美の印象のほうがよっぽどいい。
元高校生としては(笑)金沢真美のようなマネージャーに魅かれる部員たちの気持ちが
痛いほどよくわかるし、「男前」な高野聖子みたいなタイプも魅力的だ。

 

中川校長と部員たちの「戦い」も王道な感じですが、痛快でいいです。
そう、この手の作品は単純でいいのです(笑)



クライマックスの盛り上がりはベタベタなんですが単純に楽しめました。

 

「セーラー服を脱がせないで」、の歌詞を読みながら涙が出そうになるなんて。。。
と思ったんですけど、解説書いてた人(茶木則雄)も同じ気持ちを書いていました。

 

自分だけじゃなくてよかった。



エピローグ自体はあまり必要性を感じませんでしたが、一点ひっかかったことが。

 

アンドレ、どうしてそうなってるんだ?」



30代後半から40代の特に男性には、ちょっと痛くて懐かしくてくすぐったいような作品で
楽しめるのではないでしょうか。

 

なんだかんだ言ってますが面白かったので、他の作品も読んでみようと思います。




ところで、あえて言えば国生派ですが。。。。。。。。。何か?