吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

空の中 --有川浩

「深海のYrr」で深海で起きた様々な危機と顛末を味わった直後は、
高い高い「空の中」へと飛び込みました(笑)
Story Seller で有川作品を読みましたが単独書籍としては初めて読むことになります。

 

ノイタミナ」バージョンの「図書館戦争」を見ているため、何人かはキャラがかぶるため、
映像が容易に浮かびました。
図書館戦争」シリーズは文庫版になるまで待とうと思っているのですが、
内容的には恋愛物のイメージも強く
ちょっと躊躇している面もあります。オッサンですから。。。
「空の中」は問題なく買う事が出来ました。よかったよかった。



本書には「空の中」と特別書き下ろしの「仁淀の神様」が収録されています。

 

高い知能を持つ未確認生物であり、誰からの干渉もいずれかへの干渉もせずに
「全きひとつ」を望むだけの「白鯨」とその存在を知ってしまった人たちとの間に繰り広げれれる
切ないストーリーです。
自衛隊三部作の中のひとつでらしいが、作者の軍隊や飛行機に対する造詣の深さが感じ取れる。
私も何冊か読んでいる前間孝則さんの作品が参考文献としてあったので納得したましたが、
有川さんはそれらの作品を読む以前に知識や興味がある分野のような気がします。



高知の土佐弁がそのまま多用され、正直読みにくいなと思いましたが、
慣れればその言葉に含まれる温かみ、テンポが心地よい。
映画「鬼龍院花子の生涯」は大好きな作品ですが、何度も見といてよかったあ、と思いました(笑)
よく見たら有川さん、高知出身だったんですね。納得。

 

読みにくさという点ではもうひとつ、スピードを出して読めないことがかなりあったのですが、
それは言葉の定義、意味をとても微妙な言い回しで、しかし正確に表現しているので
ヘタに読み飛ばすと何のことやら、意味がわからなくなってしまうからだと思います。

 

これはゆっくりと文字を追うと解決するレベルで、決して難しい言葉を使っているわけでもなく
回りくどくもなく(一見、回りくどいように見えますが)
キッチリと考えさせるテクニックなのだろうと感じました。
ただしそのテクニックは意図的ではないと思います。
有川さんが生来持っているものではないでしょうか。
テンポはなくなってしまうのだが、人に何かを正確に伝えたい気持ち、というのがよく伝わってくる。
人の優しさと、心のうちに秘めた哀しさ、それらが起こす葛藤が痛いほど伝わる。

 

そんな葛藤をすべてを包み込む優しさと、厳しさを併せ持つ「宮じい」の存在感は大きい。
見た目のイメージは違うのだが、「鬼龍院花子の生涯」で親分を演じた仲代達矢さんの声で
ずっと読んでいました(笑)。。。案外合ってるなあと思ったんですが。

 

徹底的に正確に物事を伝えようとする者たちと、言葉のアヤで人を操ろうとする者のなかにあって
たったひと言に多くの思いを包含した言葉で話しかける「宮じい」の存在感は圧倒的だった。
年輪を感じさせる含蓄ある言葉は重く、強い。
「宮じい」のような魅力タップリなじいさんになりたいものである(笑)



この「宮じい」を描いた「仁淀の神様」という書き下ろしが、かなりいい。
これは単行本には収録されてないんだと思いますが、是非読んで欲しい小編です。
個人的に沁みてくるキーワードがいくつかあったのは確かなのですが、
それを差し引いてもいい話だと思います。
こんな雰囲気の有川作品が読んでみたいものです。




自衛隊三部作、全部早めに読みたいですねえ。でもあとの作品は今のところ単行本なんですよね~
電撃文庫の「塩の街」は見つけたんですが、躊躇します。表紙とか見るとオッサンにはきつい。
踏み絵のようだな。
踏めないと、オッサン確定みたいな(汗汗)

 

それに大幅に加筆されたらしい単行本のほうが読みたいってのもあるし。
ああ、でも加筆前の作品も読んどきたいなあ。

 

踏み絵、うっかり踏んでみるかな。。。。