吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

凍える島 --近藤史恵

サクリファイス」に行くまでの過程として読んでおかねばと思い、
いつも通りまわり道の読書を楽しむことにした。
「Story seller」で読んだ「プロトンの中の孤独」が結構男性っぽい硬質な作品に感じられたのですが、
本作はむしろ女性っぽい柔らかさを感じました。これが本来の姿か?



東京創元社より引用

 

得意客ぐるみ慰安旅行としゃれこんだ喫茶店北斎屋〉の一行は、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島へ。
かつて新興宗教の聖地だった島に、波瀾含みのメンバー構成の男女八人が降り立つ。
退屈する間もなく起こった惨事にバカンス気分は霧消し、やがて第二の犠牲者が……。
孤島テーマをモダンに演出し新境地を拓いた、第4回鮎川哲也賞受賞作。



主人公である喫茶店店主である「あやめ」によって事件の経過が語られる。
8人のグループで無人島に旅行に行き、そこで殺人が起き、それをきっかけに
次々と事件が起きるという確かにスタンダードな展開。

 

で、王道なので犯人は私にも予測できたのですが、多分そこに主題はないのではないでしょうか。
複数の恋愛が描かれていて、女性の心理描写が「あやめ」を通して随所に散りばめられている。
その心理描写こそが肝なのではないでしょうか。

 

正直なところツッコミどころがいくつもあります。
私のミステリレベルが低いことは確かですし、敢えての演出の可能性も有りそうなので書きませんが(笑)
ただ、解説にある「モダンに演出」っていうのは作中に使われる独特なカタカナ表記の事を
言っているのでしょうか。
「コォヒィ」「ノオト」「ボォト」とかなのですが、読みにくいだけで残念ながら
私には伝ってきませんでした。
事件の展開がモダンってことなのでしょうかね。



ただ、不思議な事にこのさっぱりした文章はとても好きです。
安定感のない「あやめ」の雰囲気も嫌いではないです。
冗長さも感じられなかったし、このミステリ風恋愛小説(勝手に言ってるだけです)を
スラっと読めたことは確かです。
この作風で恋愛?小説ではない作品が読みたいなと思いました。
あ、それが「サクリファイス」なのか?(笑)